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積雪地帯の冬どり作型に適するキャベツ品種

[要約]

積雪地帯において冬どり作型に適するキャベツ品種は、積雪下での障害に対する強さやおいしさなどの観点から評価すると、12月〜1月中旬収穫で「楽園」、1月中旬〜2月中旬収穫で「冬王」、2中旬〜3月消雪時収穫で「冬穫B号」である。

[キーワード]

積雪地帯、冬どり、キャベツ、品種

[担当] 秋田農技セ農試・野菜・花き部・野菜担当
[連絡先] 電話 018-881-3330,電子メール akomachi@mail2.pref.akita.jp
[区分] 東北農業・野菜花き(野菜)
[分類] 技術・普及

[背景・ねらい]
 積雪地帯においては気象的な制約から冬期の野菜生産が少ない。一方、米の生産調整による低利用の水田面積は多い。この生産調整水田を利用したキャベツの冬どり生産技術が確立されるならば、北国における周年農業生産体系の一翼を担いうる有力な手段となる。そこで、キャベツの冬どり作型(12〜3月消雪時までの収穫)を確立するため、本作型に適する品種を選定する。
 本作型に適する品種として具備すべき主な点は次の3点である。1、秋期の気温が温暖年であっても寒冷年であっても冬期に収穫するタイミングを合わせやすい品種であること、つまり、裂球しにくく、収穫可能期間が長いこと。、積雪下において障害が発生しにくいこと。3、おいしく消費者にとって魅力的であること。この3つの観点から本作型に適する品種を選定する。
[成果の内容・特徴]
  1. キャベツの生育は5度C以下で抑制される(農業技術体系)。積雪地帯である北東北地 域の平均気温が5度C以下に低下するのは、温暖年で12月上旬、寒冷年で11月上旬であり、年次変動は約1ヵ月である。この年次変動による幅が積算気温で約280度Cであることから、本作型に適するキャベツの収穫始期から裂球始期(以後収穫期間とする)までの積算気温は300度C以上であることが望ましい(表1)。
  2. 冬期収穫にタイミングを合わせやすい品種は、収穫期間の積算気温が300度C以上の品 種で、表2に示す12品種である(表2)。
  3. 積雪下における障害に対する強さの観点から、キャベツ品種は収穫可能な時期別に12 月〜1月中旬、12月〜2月中旬、12月〜3月に区分することができる(表3)。
  4. おいしさの評価が最も高い品種は、12月〜1月中旬収穫で「楽園」、12月〜2月中旬 収穫で「冬王」、12月〜3月収穫で「冬穫B号」である(表4)。
  5. 以上のことを総合的に判断すると、本作型では収穫期を12月〜1月中旬(I期)、1 月中旬〜2月中旬(II期)、2月中旬〜3月消雪時(V期)の3つの期間に区分し、I期収穫で「楽園」、U期収穫で「冬王」、III期収穫で「冬穫B号」が適する。
[成果の活用面・留意点]
  1. 水田転換畑においては排水対策を講じることが重要である。
  2. 北東北日本海側における定植期は、楽園で8月20日〜25日頃、冬王で8月10日〜15 日頃、冬穫B号で8月5日〜10日頃である。
[具体的データ]
○耕種概要
1.試験実施年度:2004〜2005年度
2.播種期(定植期)
  2004年:7月11、15、22日(8月3、5、11日)
  2005年:7月15、22、29日、8月5日(8月5、12、19、25日)
3.栽植密度:畝幅60cm、株間35cm(476株/a)
4.施肥量:チッソ、リン酸、カリ 基肥各1.5kg/a 、追肥各 1.0kg/a
5.積雪の状況
  1)根雪期間:2004年度;12月21日〜4月4日、2005年度;12月10日〜3月21日
  2)最大積雪深:2004年度;115cm、2005年度;130cm
[その他]
研究課題名 寒冷地・積雪下における冬春期野菜の安定生産技術の開発
予算区分 競争的資金(高度化事業
研究期間 2005〜2006年
研究担当者 田村晃、篠田光江
発表論文等 田村ら(2006)園芸学会東北支部平成18年度大会研究発表要旨7-8