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リンゴ新品種「トキ」は黄色の中生種として有望である

[要約]

青森県の民間育成品種「トキ」は外観、食味、食感が良好な黄色品種で、早生種の「きおう」と黄色の晩生種をつなぐ中生種として、優れた特性を持つ。

[キーワード]

リンゴ、「トキ」、黄色品種、中生種

[担当]

青森農林総研・りんご試・育種部

[代表連絡先]

電話0172-52-2331

[区分]

東北農業・果樹

[分類]

技術・普及

[背景・ねらい]

近年、りんご栽培においては労働力不足やコスト低減のため、着色管理作業が不要な黄色品種が注目され、早生種では「きおう」、晩生種では既存の「王林」に加え「星の金貨」、「シナノゴールド」等が増えてきている。中生種ではこれまで有望な黄色品種がなかったが、最近、青森県内では「トキ」が注目されてきたので、その特性を明らかにする。

[成果の内容・特徴]

  1. 本品種は青森県五所川原市の土岐伝四郎氏が育成した品種で、2004年(平成16年)11月に品種名「トキ」(王林×紅月)として品種登録された。その後、S遺伝子型等の矛盾から、組み合わせを「王林」×「ふじ」に訂正した。
  2. 育成地における熟期は10月上旬であるが、成熟の揃いはやや悪い。果実の大きさは300〜400gでややばらつく。果色は黄色で陽向面がうすく紅色に着色する(図1)。果形は円〜扁円形である。果肉硬度は15〜16ポンドで、肉質は「ふじ」よりち密、多汁で食感がよい。糖度(Brix)は14〜15%、酸度は0.2〜 0.3g/100ml程度で、香りが良く、甘味である(表1)。貯蔵期間は普通冷蔵で12月中旬頃までで、貯蔵障害はみられない(表2)。こうあ部や側面にさびがわずかに発生する。
  3. 生態は発芽日から落花日まで「ふじ」より1日程度早い。樹の生育特性は「王林」に似ており、側枝は直立しやすい。短果枝に弱小芽が多く、玉伸びにばらつきがみられる。早期落果、後期落果はともにみられない。生産力は「ふじ」並みで中程度である。着果量は当面「ふじ」程度で問題ないと思われる。隔年結果はほとんどみられない。
  4. 自家不和合性S遺伝子型はS2S9で、主力品種の「ふじ」、「つがる」、「王林」と和合性であるが、「金星」、「ジョナゴールド」、「あおり21」とは不和合性である(表3)。斑点落葉病には強い。

[成果の活用面・留意点]

  1. 本品種は、早生種の「きおう」、晩生種の「王林」、「星の金貨」、「シナノゴールド」をつないで黄色品種のリレー販売ができる有望な黄色の中生種として青森県の試作品種とする。
  2. 熟期がややばらつくので、収穫は側面が黄色味を帯びた果実から順に2〜3回に分けて行う。
  3. 若木では樹勢が強く、側枝が直立しやすいことから、誘引を行い、樹勢を落ち着かせる。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
海外・国内導入品種の特性
予算区分
県単
研究期間
1985〜2011年度
研究担当者
工藤剛、深澤(赤田)朝子、秋田奈津子、今智之