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インゲンマメ葉浸漬によってナミハダニの薬剤感受性を検定する

[要約]

リンゴ園で採集したナミハダニをインゲンマメ葉に接種して、実用濃度の薬液に浸漬すると、殺ダニ剤に対する感受性の園地間および薬剤間の差異を検出できる。検定結果は、共同防除組合や園地ごとに適切な薬剤を選定する際の参考になる。

[キーワード]

葉片浸漬法、薬剤感受性、ナミハダニ、リンゴ、インゲンマメ

[担当]

東北農研・省農薬リンゴ研究チーム、果樹研・省農薬リンゴ研究果樹サブチーム

[代表連絡先]

電話019-643-3496

[区分]

東北農業・果樹

[分類]

技術・参考

[背景・ねらい]

リンゴでは、発生するナミハダニの薬剤感受性程度が地域や園地ごとに異なり、薬剤選定を適切に行うために簡易な検定法が求められている。高額機器や高度な分析を用いない検定法として、ハダニの寄生葉を薬液に直接浸漬する葉片浸漬法が提案されている。しかし、葉裏に毛が密生するリンゴ葉を使用した浸漬は、虫体への薬液付着性にムラができることへの危惧から実用化されていない。そこで、葉面に毛の少ないインゲンマメ葉を使用する浸漬法を用いて、園地ごとにナミハダニの薬剤感受性を検定する。この方法で感受性が相対的に高い薬剤を選択することで、無駄な殺ダニ剤散布を少なくした省農薬防除に貢献する。

[成果の内容・特徴]

  1. インゲンマメ(品種‘ナガウズラ菜豆’)葉片(4×4cm)にナミハダニ雌成虫を接種し、展着剤を添加していない実用濃度の殺ダニ剤水溶液に5秒間浸漬して、風乾後水を含ませた脱脂綿に載せ、シャーレ内で保存し、1週間後に死亡した個体を計数する(図1)。
  2. この方法により、園地ごとの薬剤感受性の差異(死亡率の中央値とバラツキ)(図2)、および、殺ダニ剤ごとの感受性の差異が検出される(図3)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 複数の候補薬剤に対する感受性を検定し,死亡率が相対的に高い薬剤を選定する。共同防除の場合には、死亡率が高く,なおかつ,リンゴ園ごとに死亡率にバラツキの小さい薬剤を選定する。
  2. マメ葉に産下卵だけを残して同様の浸漬処理を行うことにより、殺卵効果を判定することができる。
  3. 鉢植えインゲンマメをリンゴ園に設置して、ナミハダニをマメ葉に自然に寄生させると、ナミハダニ雌成虫の接種作業を省略することが可能である。発育ステージが混在する場合には,雌成虫の生死で薬剤感受性を判定する。
  4. 死亡個体の確認や殺卵効果の判定には、実体顕微鏡が必要である。
  5. この方法で検定した結果は、盛岡地方のリンゴ特別栽培における殺ダニ剤選択に部分的に活用されている。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
フェロモン利用等を基幹とした農薬を50%削減するりんご栽培技術の開発
課題ID
214-o
予算区分
農薬削減リンゴ
研究期間
2005-2008年度
研究担当者
高梨祐明、豊島真吾(果樹研)
発表論文等
高梨ら(2009)東北農研研報、110:177-186.