研究所トップ研究成果情報平成20年度

リンゴ園に発生するナミハダニの密度を「払い落とし−押し潰し法」により推定する

[要約]

リンゴ園から多数の葉を採集し、2本のブラシで葉を挟むように寄生するナミハダニを払い落とし、押し潰して得られた斑点を数えると、ナミハダニの発生初期の密度を把握できる。

[キーワード]

ナミハダニ、リンゴ、初期密度、密度推定

[担当]

果樹研・省農薬リンゴ研究果樹サブチーム、東北農研・省農薬リンゴ研究チーム

[代表連絡先]

電話019-645-6157

[区分]

東北農業・果樹、果樹・病害虫

[分類]

技術・参考

[背景・ねらい]

ナミハダニは、発生初期に適切な殺ダニ剤を散布すると効果的に防除できるので、発生初期の寄生密度を正確に推定する必要がある。現在活用されているルーペを用いたハダニ密度推定では、少数の葉を観察してナミハダニ寄生の有無を判断することが多く、寄生を見落としたり、加害された部位だけを観察して過大に推定する場合がある。試験研究機関では、ナミハダニの寄生密度を正確に推定するために、多数の葉を採集してブラッシングマシンで寄生するハダニを払い落とし、実体顕微鏡下でハダニ種ごとに計数する。専用の機器を用いる方法では、生産者は利用できないので、ブラッシングマシンと実体顕微鏡の代替手法を考案し,ナミハダニの発生初期の密度を把握して防除適期を判断する。

[成果の内容・特徴]

  1. ブラッシングマシンの代替手法として、2本のブラシでリンゴ葉を挟んで寄生するナミハダニを払い落とす(図1)。ナイロンの毛を有した試験管洗浄用ブラシ(ブラシ部分の直径30mm〜40mm、ブラシ幅80mm〜105mm)2本をトング状に加工したブラシでブラッシングすると、葉の葉裏に寄生する95%の雌成虫を払い落とすことができる。
  2. 実体顕微鏡の代替手法として、払い落としたナミハダニを紙に押し潰して(図1)、形成された斑点(図2の右)を計数する。
  3. 形成された斑点のうち、直径約1mmの黒色斑点(図2の左)を選んで計数すると、計数した斑点数と実際の寄生数の間の相関関係が高い(相関係数(r)が0.8以上の)生産者が5割を超え(図3)、比較的正確(相関係数r=0.92)にハダニの寄生密度を推定する生産者もいる。
  4. 葉あたり寄生数が雌成虫8頭以下の場合には、実際の寄生数と斑点数の間に正の相関が得られ(相関係数r=0.94、回帰式y=0.68x+1.55(重相関係数r2=0.89))、計数した斑点数を0.68倍して1.55を足すことにより、発生初期の寄生密度を推定できる(図4)。

[成果の活用面・留意点]

  1. ナミハダニが主に発生するリンゴ園で活用する。
  2. リンゴ園の広範囲から、30枚程度の葉をランダムに採集する。
  3. ブラシをトング状に加工すると、リンゴ葉を挟みやすい。
  4. 雌成虫の斑点を識別できるように、斑点の計数に慣れる。
  5. 斑点の計数に慣れたら、斑点数と寄生数の関係を調べて、寄生数を推定するための係数を算出する。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
フェロモン利用等を基幹とした農薬を50%削減するりんご栽培技術の開発
課題ID
214-o
予算区分
基盤
研究期間
2006〜2008年度
研究担当者
豊島真吾、高梨祐明(東北農研)
発表論文等
豊島ら (2008) 応動昆 52(3): 107-112.