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良食味で「ラ・フランス」の10日前に収穫可能なセイヨウナシ新品種「メロウリッチ」
[要約]
セイヨウナシ「メロウリッチ」は「ラ・フランス」より10日程度早く収穫できる中生種である。糖度は16〜17%と極めて高く、肉質は滑らかで香りは多く、食味濃厚である。追熟すると果皮色が黄緑色に変化し、「ラ・フランス」と比較して食べ頃が判りやすい。
[キーワード]
セイヨウナシ、新品種、食味良好、中生種、「メロウリッチ」
[担当]
山形農総研セ・農生技試・バイオ育種科
[代表連絡先]
電話0237-84-4125
[区分]
東北農業・果樹
[分類]
技術・普及
[背景・ねらい]
本県特産のセイヨウナシの品種構成は「ラ・フランス」に偏重しているため、生産や流通上、大きな妨げとなっている。このことから、「ラ・フランス」より早い時期に収穫が可能で、商品性が高く、栽培性に優れたオリジナル優良品種の育成を図る。
[成果の内容・特徴]
- 育成経過
交雑親:「ミクルマス・ネリス」×「ラ・フランス」、交雑年:1984年(昭和59年)、品種登録出願:2007年(平成19年)、品種登録出願公表:2008年(平成20年)
- 生態及び樹体特性の概要(表1)
- 開花盛期は4月下旬〜5月上旬で「ラ・フランス」より1〜2日遅い。
- 収穫期は10月上旬で「ラ・フランス」より10日程度早い。
- 樹勢は中程度。主枝の発出角度は中程度で、太さはやや細く、開張しやすい。
- 果実特性の概要(表1、図1)
- 果形は不正円錐。果実重は270〜290gで「ラ・フランス」よりやや小さい(表1)。
- 果皮色は、収穫時は緑黄色で追熟後は黄緑色に変わり、「ラ・フランス」に比較すると食べ頃が判りやすい。さびの発生は多く、ほぼ全面さびに覆われる場合がある。
- 可食期の糖度は16〜17%で「ラ・フランス」より約2%高く、酸度は0.30g/100ml(リンゴ酸換算)前後で「ラ・フランス」よりやや高い(表1)。食味は甘酸ともに多く濃厚である。
- 果肉硬度は、収穫時は13.0〜13.5ポンドで、可食期は2.0〜2.5ポンド程度である(表1)。肉質はち密で滑らかで、果汁は多い。石細胞は「ラ・フランス」より多い。
- 香りの質は「ラ・フランス」に似ており、香りの量は「ラ・フランス」より多い。
- 輪紋病の罹病程度は「ラ・フランス」並みである。
- 果実の日持ち性は、20℃条件下で6日程度で、「ラ・フランス」並みである(表2)。
- 「バートレット」「オーロラ」「ゼネラル・レクラーク」「バラード」「ラ・フランス」「シルバーベル」「ル・レクチエ」とは交雑和合性である(表3)。
[成果の活用面・留意点]
- 病害虫防除は「ラ・フランス」に準じて行う。
- 苗木の販売は、県単独事業で育成された品種であるため、当面は山形県内限定販売と
なる。
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名
- 西洋なしオリジナル優良品種の開発
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 1984〜2006年度
- 研究担当者
- 黒田潤、矢野和男、阿部芳幸、安藤栄壽、米野智弥、丸川崇
- 発表論文等
- 品種登録出願(2007.11.9)、出願番号「第21659号」、出願公表(2008.2.19)