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7月上中旬に収穫できる食味良好なモモ白肉新品種「はつひめ」

[要約]

モモ中生種「あかつき」に極早生種「はつおとめ」を交配し、早生で大果のモモ新品種「はつひめ」を選抜、育成した。福島県での熟期は7月上中旬であり、果重は220〜300g、糖度は10〜14%である。肉質は滑らかで、多汁である。食味は香りが豊富で甘味である。

[キーワード]

モモ、果樹、新品種育種、早生種、「はつひめ」

[担当]

福島農総セ果樹研・栽培科育種担当

[代表連絡先]

電話024-542-4952

[区分]

東北農業・果樹

[分類]

技術・普及

[背景・ねらい]

福島県の早生モモの有利販売を確保し、中生種に偏重した福島県におけるモモの品種構成を改善するため、果実形質に優れ、食味など品質良好な早生新品種育成を図る。

[成果の内容・特徴]

  1. 「はつひめ」は、1999年に「あかつき」(♀)に「はつおとめ」(♂)を交配した交雑実生から選抜され、2008年2月18日付けで種苗法に基づく品種登録を申請した(図1)。
  2. 開花期は「あかつき」と同時期で、花粉はない。満開から約80日で成熟し、「日川白鳳」より7日程度早く、育成地(福島市飯坂町平野)において7月10日前後に収穫できる(図2表1)。
  3. 果形は扁円形で、充実した側枝では豊満な果形となり、「あかつき」に似る(図1)。果皮着色は明るい赤で、初め縞が明瞭であるが、成熟期には着色が全面におよび縞が不明瞭となる。果肉色は白で核周りの色素は無である。果重は220〜300gで早生種としては大果である。肉質は幾分、繊維が混じるが滑らかで、多汁である。食味は香りが豊富で、糖度は10〜14%とこの時期としては甘味が多い(図3)。果実の日持ちは15℃で3〜4日である。
  4. 樹姿は「あかつき」並みの中間、樹勢は「はつおとめ」より弱く、「あかつき」並みの中である。新梢は太く、「ふくおとめ」や「あかつき」に似る。また枝が硬く側枝は下垂しにくい。幹の肥大は緩慢である。
  5. 硬核期は満開後50日頃で「あかつき」と同時期である。着色開始期は硬核期から10〜14日後、収穫始めは着色開始期から15〜20日後頃である。
  6. 果肉内に紅色素が見られる。核割れの発生率は10%以下で早生種としては少ない方である。裂果、生理落果の発生は認められない。

[成果の活用面・留意点]

  1. 花粉は無いが満開期が「あかつき」と同時期であり、自然交配が期待できるので混植園であれば人工受粉は必要ない。なお、防除上の問題から混植は困難と思われる。その場合は、人工受粉の実施が望ましい。
  2. 花粉が無いので摘蕾作業は省略できるが、短果枝を中心に50%程度の摘蕾は果実肥大確保に有効である。
  3. 苗木の販売は、県単独事業で育成された品種であるため、当面は福島県内限定販売となる。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
果樹の新品種育成
予算区分
県単
研究期間
1999〜2008年度
研究担当者
佐藤守、岡田初彦、小野勇治、大橋義孝、木幡栄子
発表論文等
品種登録出願(2008.02.18)