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宮城県におけるキク白さび病レースの存在と抵抗性遺伝子の遺伝様式

[要約]

宮城県内で発生するキク白さび病菌には少なくとも10以上のレースが存在する。「精海」は、多くのレースに抵抗性を示し、単因子優性の抵抗性遺伝子を有していると考えられる。抵抗性品種間の交配から、より多くのレースに抵抗性を示す個体を作出できる。

[キーワード]

キク、キク白さび病、抵抗性、遺伝様式

[担当]

宮城農園研・バイオテクノロジー開発部・遺伝子工学チーム

[代表連絡先]

電話022-383-8131

[区分]

東北農業・野菜花き(花き)

[分類]

研究・参考

[背景・ねらい]

キク白さび病菌(Puccinia horiana P. Hennings)によるキク白さび病は、防除が困難であり商品性を著しく損ねることから、重要な病害のひとつである。キク白さび病菌にはレースが複数存在することが知られており、品種ごとの感受性について不明な点が多い。そこで、宮城県内で発生するキク白さび病菌レースに抵抗性を示す輪ギク品種を明らかにし、白さび病抵抗性育種の基礎的知見を得るために抵抗性遺伝子の遺伝様式を解明する。

[成果の内容・特徴]

  1. 宮城県内17地点より採取したキク白さび病菌を6品種(一部7品種)に接種した場合、「精海」は多くの白さび病菌に対して抵抗性を示し、逆に、「秀芳の力」は調査したすべての白さび菌に対して罹病性を示す。この判別品種の反応の違いから、調査した17の分離菌株は10 のレースに分類できる(表1)。
  2. 南三陸町B分離菌株に対して抵抗性を示す「精海」と、罹病性を示す「深志の匠」、「スーパーイエロー」との交配より得られたF1は、同レースに対する抵抗性と罹病性の個体がおよそ1:1に分離する(表2)。
  3. 南三陸町B分離菌株に対して抵抗性を示すF1同士の交雑後代では、同レースに対して抵抗性の個体と罹病性の個体がおよそ3:1に分離する。同様に、罹病性×抵抗性の交雑後代のそれはおよそ1:1に分離する。このため、「精海」の本病に対する抵抗性は単因子優性の遺伝子に支配されていると考えられる(表3)。
  4. 「精海」(南三陸町B分離菌株に抵抗性を示し、美里町分離菌株に罹病性を示す)と、「深志の匠」(美里町分離菌株に対して抵抗性を示し、南三陸町B分離菌株に罹病性を示す)の交雑では、南三陸町B分離菌株および美里町分離菌株の両方に抵抗性を示すF1個体が得られる(表4)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 白さび病抵抗性を付与するキク育種へ活用できる。
  2. 抵抗性の判断は、2004年から2006年に宮城県内で採取したキク白さび病菌レースに対する反応である。
  3. 白さび病菌には複数のレースが存在するため、他のレースと品種との病害抵抗性の判定については別に検討する必要がある。
  4. キク品種が持つ白さび病抵抗性には、真性抵抗性と圃場抵抗性とが報告されている。「精海」は、接種試験および感染過程の観察から本品種が抵抗性を示すレースに対して真性抵抗性である可能性が高い。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
バイオテクノロジーを利用した新品種育成
予算区分
県単
研究期間
2004〜2008 年度
研究担当者
岩井孝尚、瀬尾直美、板橋建