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炭素イオンビームを利用したユリ属園芸品種の突然変異誘発

[要約]

炭素イオンビームを照射し突然変異を誘発することで、アジアティックハイブリッドユリにおいて、花被片の斑点が減少した変異株や花色が変化した変異株を作出できる。シンテッポウユリでは無花粉の変異株を作出できる。

[キーワード]

イオンビーム、炭素イオン、ユリ属、突然変異

[担当]

宮城農園研・バイオテクノロジー開発部・遺伝子工学チーム

[代表連絡先]

電話022-383-8131

[区分]

東北農業・野菜花き(花き)

[分類]

研究・参考

[背景・ねらい]

近年、イオンビームを利用した突然変異育種によりキクやカーネーション等の花きで新品種が作出されているが、これを利用してユリ属園芸品種を育成した事例は無い。そこでアジアティックハイブリッドユリ(Asiatic Hybrid Lily)とシンテッポウユリ(Lilium × formolongi Hort.)に対し、炭素イオンビームにより突然変異を誘発し、花に観察される変異を調査する。

[成果の内容・特徴]

  1. アジアテックハイブリッドユリのりん片へ炭素イオンビームを照射した場合、線量1Gy(グレイ)でりん片からの子球の再生率が低下する(表1)。
  2. シンテッポウユリの種子へ炭素イオンビームを照射した場合,線量5Gyで開花率と結果率が低下する(表2)。
  3. 花被片に斑点をもつアジアテックハイブリッドユリの品種「カルタゴ」において、炭素イオンビーム0.5Gyの照射により、斑点の数が減少した変異株が得られる(表3図1−I)。
  4. アジアテックハイブリッドユリの品種「ロリーポップ」では、炭素イオンビーム0.5〜1.0Gyの照射により、花被片のアントシアニン色素の発現が完全に抑制され,赤色部分が白化した変異株が得られる(表3図1−II)。
  5. アジアテックハイブリッドユリの品種「チャンティ」では、炭素イオンビーム0.5Gyの照射により、花被片のアントシアニン色素の発現が量的に変化し、桃色に濃淡が着いた変異株が得られる(表3図1−III)。
  6. シンテッポウユリの品種「オーガスタ」では、炭素イオンビーム2.0Gyの照射により子房の稔性はあるが無花粉の変異株が得られる(表3図1−IV)。
  7. これら変異株と対照株の生育に、違いは観察されない。

[成果の活用面・留意点]

  1. 炭素イオンビームによる変異誘発はユリの育種に利用可能で、無花粉や花被片の斑点の数を減少させた従属品種、花色の色調を変化させた従属品種が作出できる。
  2. 日本原子力研究開発機構高崎量子応用研究所のイオンビーム照射施設を利用した結果である。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
バイオテクノロジー技術を利用した新品種育成
予算区分
県単
研究期間
2004〜2008 年度
研究担当者
千葉直樹、足立陽子、荒川梢、板橋建、中村茂雄、鈴木誠一(宮城農園研)、横田裕一郎、長谷純宏、鳴海一成(原子力機構)
発表論文等
JAEA Takasaki Annual Report 2005: p92.
JAEA Takasaki Annual Report 2006: P77.
第2回高崎量子応用研究シンポジウム(2007):p153.