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飼料用稲における湛水直播栽培の経済性評価

[要約]

飼料用稲栽培は専用品種の湛水直播栽培とそれに適した施肥などの技術導入によ り、主食用品種の移植栽培より収量増加が可能である。また、収量増加に伴う経費負担を 上回る収益向上が見込める。

[キーワード]

飼料用稲、湛水直播、経済性

[担当]

秋田農技セ企画・秋田農技セ農試・WCSプロジェクトチーム

[代表連絡先]

電話018-881-3313

[区分]

東北農業・基盤技術(経営)

[分類]

行政・参考

[背景・ねらい]

肉用牛や酪農経営では、粗飼料生産基盤の拡大による飼料自給率の向上と糞尿処理が課題となっている。一方、稲作経営では転作水田の有効活用が課題である。このことから転作水田を活用した飼料用稲の低コスト生産と粗飼料としての利用が求められている。こうしたニーズを解決する手段の一つである、湛水直播栽培の経済性を評価する。

[成果の内容・特徴]

  1. 飼料用稲の生産を行う法人組織(表1)で慣行の移植栽培と湛水直播栽培による現地実証を比較すると、専用品種(べこごのみ)とそれに適した施肥などの技術導入により、10a当たり収量で、A法人2.23t(慣行移植対比146%)、B法人2.88t(慣行移植対比137%)を確保でき主食用品種の移植栽培より収量増加が可能である(表2)。
  2. 支出はA法人50千円/10a(慣行移植対比88%)、B法人95千円(慣行移植対比106%)で、主産物価額でこれを賄うことはできないが、雑収入を加味した剰余ではA法人15千円/10a、B法人6千円/10aとなり、移植栽培より収益の向上が可能である(表2)。
  3. 労働時間はA法人5.5h/10a(慣行移植対比82%)、B法人10.0h/10a(慣行移植対比95%)で、田植作業がないことなどから、移植栽培に比べ軽減される(表2)。
  4. 乾物1kg当たり生産費はA法人で73円/kg(慣行移植対比62%)、B法人で78円/kg(慣行移植対比78%)である。仮に、A法人でたい肥散布を除くと51円/kg、B法人で地代等の負担を除くと57円/kgが可能となる(表2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 飼料用稲の導入判断や栽培方法の検討資料として活用できる。
  2. 大規模経営による事例であり、中小規模経営では機械の稼働面積を増やすことや、作業効率を上げるなどの工夫が必要である。
  3. 補助金(産地づくり交付金等)は地域水田農業推進協議会により額が異なり、収益性も地域で異なる。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
日本海側グライ土水田地帯における飼料用稲生産・給与技術の実証と耕畜連携システムの確立
予算区分
委託プロ(えさ)
研究期間
2006〜2007年度
研究担当者
鵜沼秀樹、佐野広伸、若松一幸、佐藤雄幸、眞崎聡、田村保男