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直売所売上高に対する経営理念要素の影響
[要約]
農産物直売所の売上高成長率には、社会的使命の有無が強く影響しており、経営理念要素は、直売所経営の成長に深く関与している。
[キーワード]
直売所、成長、経営理念
[担当]
福島農総セ・企画経営部・経営・農作業科
[代表連絡先]
電話024-958-1700
[区分]
東北農業・基盤技術(経営)
[分類]
行政・参考
[背景・ねらい]
農産物直売所(以下、直売所)は近年設立が相次いだが、厳しい経営環境に直面する直売所も生じている。また、直売所経営に対する戦略・戦術面の方策が明らかにされているが、生かし切れない実情もみられる。
そこで、聞取調査・農産物直売台帳・アンケート調査を基に、経営分析の視点から直売所経営の発展要因・阻害要因を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 経営理念は「社会的使命とビジョン」と定義する。「社会的使命あり」の直売所は、「地域・集落の活性化」「消費者との交流促進」「より良い農産物を食卓に」のいずれかを主要開設理由にしており、中には「ビジョン」を併せ持つ直売所もある。「社会的使命なし」の直売所は、「余剰農産物の販売」「生産者同士の交流」「外部からの依頼」のいずれかを主要な開設理由にしている。
- 聞取調査等により得られた情報を、経営分析の要素(経営理念・事業領域・戦略・経営環境・経営資源・組織・財務に関する32項目)に分類した後、売上高成長率との相関から抽出した調査項目は、社会的使命、戦略的意向、宅配事業、食材供給、加工活動、補助事業、近隣直売所の7項目である(表1)。調査項目別の売上高成長率に及ぼす影響度をみると、「社会的使命あり」の影響が強く、ついで「戦略的意向あり」の影響が強い。また、売上高減少に及ぼす影響度としては、「社会的使命なし」の影響が最も強い(表2)。
- 「社会的使命あり」の場合、売上高の成長している直売所は、経営理念要素が会員間で共有化されていた。それにより、戦略的な意思決定や事業計画が会員同士に共有され、直売所活動に反映されている。反省評価の段階で課題が明らかになると、フィードバックして新たな戦略や計画が共有され、時として経営理念要素を見直す機会にもなる(図1)。この一連のサイクルを通じて、経営理念要素は、直売所の経営成長に深く関与している。
[成果の活用面・留意点]
- 聞取調査は、県内の直売所から26ヶ所を無作為に抽出し、直売所代表者の聞き取りを実施した(H19、H20実施)。農産物直売所台帳は、県農林水産部が各市町村に調査を依頼し取りまとめた(H16、H18実施)。アンケート調査は、県内176の直売所について郵送法により実施している(H18実施、回収率59%)。
また、それらの調査項目と、売上高成長率(H18実績/H16実績)との関係を数量化I類で分析している。
- 農産物直売所の経営支援等の参考情報として活用する。
- 研究課題は、中山間地域を対象としているが、本成果は、平地も含めた全域的な情報として活用できる。
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名
- アグリビジネスの経営実態と類型化
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 2006〜2008年度
- 研究担当者
- 新妻俊栄、宮島聡