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飼料イネロールベールは「広々配置」すればネズミ食害を軽減できる

[要約]

ロールベールに調製された飼料イネを家ネズミ類から守るためには、ロールベールの間隔を空けてネズミの隠れ場所を作らないように配置すればよい。野ネズミ類に対しては金網を敷くことで対処できる。

[キーワード]

稲発酵粗飼料、食害、飼料イネ、ネズミ、ロールベール

[担当]

東北農研・東北飼料イネ研究チーム

[代表連絡先]

電話019-643-3411

[区分]

東北農業・畜産、畜産草地、共通基盤・総合研究(飼料イネ)

[分類]

技術・普及

[背景・ねらい]

飼料イネロールベールサイレージは、貯蔵中にロールベール内の籾を狙うネズミによってラップフィルムが損傷されると容易に変敗してしまう。ドブネズミや野ネズミ類はロールベール下の地面に穴を掘って主に底部から食害し、クマネズミは積み重ねたロールベールの上段部にまで食害を及ぼすため、特に被害が拡大しやすい。飼料イネの生産量が増加するに従って、これらネズミ食害が深刻になっていくことが懸念される。そこで飼料イネロールベールを安定的に貯蔵するため、殺鼠剤などの毒性物質に頼ることなく低コストでネズミ食害を軽減する技術を開発する。

[成果の内容・特徴]

  1. この技術は、ネズミが常に捕食者(イタチ、猛禽類、ヘビ、猫等)を警戒しつつエサを探す習性を利用しており、ネズミの隠れ場所を作らないようにロールベールの間隔を空けて広々と配置(広々配置、図1)すると、ネズミの捕食者に対する警戒感を高めるため、飼料イネロールベールの食害を軽減できる(図2)。
  2. 広々配置のロールベール間隔は50cm(小型のミニロールは30cm)以上とし、見通しを確保する。この間隔を空けるためには、作業時間と設置面積が大幅に増加(面積は1m径ロールで1.5倍以上、ミニロールでは2.5倍以上)するが、人がロールベール間を見回ることができ、フィルム破損等への対応も行いやすい。
  3. 野ネズミ類が生息する未舗装地に長期間貯蔵する場合、広々配置のみでは特に冬季間に底部から被害を受ける。この場合、網目1cm程度の金網(線径1mm程度のビニール被覆亀甲金網が柔らかくラップを痛めにくい。参考価格700円/m2)を下に敷いて貯蔵すれば被害を軽減できる(図3)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 飼料イネロールベールの貯蔵場所を分散させるなど、貯蔵スペースが十分に確保できる条件において、ネズミ食害による損耗率低下が期待できる。
  2. 鳥害と防草対策が必要である。特に鳥害対策として防鳥ネットや網でロールベールを覆う方法は捕食者の出入りも阻止してしまうのでテグスを使用する必要がある。
  3. 積雪地帯において、ロールベール間に雪のブリッジが架かるような条件下では効果が劣る。また、ロールベール下にパレット、スノコやタイヤ等を敷くとネズミの隠れ場所を造ることになるので避け、これら資材はロールベール周辺から撤去する必要がある。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
東北地域における水田高度利用による飼料用稲生産と耕畜連携による資源循 環型地域営農システムの確立
課題ID
212-b.1
予算区分
基盤(所内活性化)、委託プロ(えさ)
研究期間
2006-2008年度
研究担当者
河本英憲、関矢博幸、押部明徳、小松篤司、福重直輝
発表論文等
1)河本ら(2008)東北農業研究、61:97-98
2)H. Kawamoto et al. (2009) Grassland Science, 55:110-112