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イタリアンライグラスと大豆を組み合わせた高蛋白質粗飼料の無農薬栽培体系

[要約]

秋播き性のイタリアンライグラスを春播きし、収穫後の再生草をリビングマルチとして大豆を栽培すれば、農薬なしで粗蛋白質含量13〜20%の飼料が乾物で約1000kg/10a得られる。本体系の雑草抑制力は強く、無農薬でも雑草の増加・拡散は生じない。

[キーワード]

イタリアンライグラス、飼料用大豆、リビングマルチ、無農薬栽培

[担当]

東北農研・寒冷地飼料資源研究チーム

[代表連絡先]

電話019-643-3543

[区分]

東北農業・畜産、畜産草地

[分類]

技術・普及

[背景・ねらい]

近年アメリカでは、乳牛用の新たな高蛋白質粗飼料として大豆サイレージが注目され、専用品種の開発も進んでいる。国内でも高蛋白質粗飼料への要望は強く、大豆はその有望作物のひとつであるが、飼料用としての登録農薬がないため乳牛飼養に対応した大規模栽培が難しい状況にある。そこで、イタリアンライグラスをリビングマルチ利用することによって、大豆を大規模に無農薬栽培する作付体系を開発する。

[成果の内容・特徴]

  1. 秋播き性程度の高いイタリアンライグラス(エース)を4月に播種すると未出穂のまま生長し、6月には粗蛋白質(以下CP)含量13%程度の粗飼料が乾物で約450kg/10a得られる。さらにその再生草をリビングマルチとして不耕起で大豆(黒千石)を栽培すると、10月にはCP含量20%程度の粗飼料(鞘肥大期)が乾物で約500kg/10a得られる(図1)。
  2. イタリアンライグラスは、6月の収穫後も栄養生長を継続するため草丈は高くならず、9月には大豆に被陰されて枯死する。10月の収穫物にはこの枯草が約20%混入するが、そのCP含量は高く、混入によって収穫物の飼料価値が大きく低下することはない(図1・付表右)。
  3. 一般的な飼料畑であれば、イタリアンライグラスを5kg/10a以上播種すれば、6月、10月ともに雑草がほとんど混入しない収穫物が得られる(図2)。播種量を2kg/10a程度に減じても10月収穫の大豆への雑草防除効果は低下しないが、6月の収穫物には雑草が30%程度混入する。ただし、この雑草は栄養生長期にあるため、混入しても雑草拡散の原因とはならず、飼料価値も低くはない(図2表1)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 高蛋白質粗飼料の大規模生産および有機飼料生産の基幹技術となる。
  2. 作付体系は寒冷地向けであるが、その要素技術である「イタリアンライグラス再生草を利用したリビングマルチ栽培」は温暖地へも適用が可能である。
  3. 本体系の調製時には、イタリアンライグラスの刈株とルートマットが地表面を密に被覆しているので、収穫物への土砂混入はほとんど生じない。
  4. 大豆の葉は乾燥すると脱落しやすいので、テッダなしで予乾した後、朝露の残るうちに集草する。この方法でも晴天であれば2〜3日で40〜50%の水分となる。
  5. 本体系による防除効果が確認できている雑草種は、コアカザ、シロザ、オオイヌタデ、ハルタデ、ホソアオゲイトウ、イヌビエ、メヒシバである。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
飼料自給率向上に向けた多様な寒冷地飼料資源の活用技術の開発
課題ID
212-e.2
予算区分
交付金プロ(有機短角)
研究期間
2008年度
研究担当者
魚住順、嶝野英子、出口新