研究所トップ≫研究成果情報≫平成20年度
水稲湛水直播機のフロートに装着できる作溝装置
[要約]
水稲湛水直播機のフロートに装着し、播種と同時に、導水溝を形成できる作溝装置を開発した。これを用いることにより、落水出芽における落水及び入水を、均一かつすみやかに実施でき、滞水による出芽不良を回避できる。
[キーワード]
落水出芽、湛水条播、作溝、導水溝
[担当]
岩手農研・プロジェクト推進室(水田農業)
[代表連絡先]
電話0197-68-2331
[区分]
東北農業・基盤技術(作業技術)、東北農業・作物(稲栽培)
[分類]
技術・普及
[背景・ねらい]
水稲湛水直播栽培では、落水のため導水溝を設置することが有効だが、従来の播種機に取り付ける市販の作溝機は、溝が小さく、本数も少ないため、滞水によるの出芽ムラや欠株を十分に解消できず、収量確保の上で課題となっている。そこで、均一な落水及び入水ができるよう、播種と同時に十分な幅と深さの導水溝を形成できる装置を開発する。
[成果の内容・特徴]
- 開発した作溝装置(以下、本機)は、多目的田植機の直播用フロートの底部に簡便に装着できる、泥よけ装置、溝切り装置、成形ウイング、種子誘導溝装置部品から成る(図1左)。
- 本機は、播種と同時に、播種列の近傍約7〜10cmの位置に、幅10〜15cm、深さ4〜8cm程度のV字状の導水溝を、播種列2本に対し溝1本の割合で形成することができる(図1右)。播種位置の確認が容易になるため、作業者の播種作業の確認や、出芽時の観察が確実にできる。
- 導水溝の断面積は40cm2程度(市販の作溝機の1.6倍、溝条間は0.6m(同1.5倍)、導水溝容積は67cm3(同2.5倍)になる。なお、本機を装着した場合の作溝同時播種に要する実作業時間は、大区画ほ場で12〜18分/10aであり、市販の作溝機と同等である(表1)。
- 播種列周辺の田面水をすみやかに排除でき、落水、入水が均一かつすみやかにできる(図2左)。また、枕地周辺やほ場内の凹部における、滞水を解消し、出芽ムラや欠株を回避できる(図2右)。
- 5.本機での作溝同時播種は、出芽後の葉齢のバラツキが小さく、出芽が揃う特徴がある。(図3)
[成果の活用面・留意点]
- 落水出芽を行う水稲湛水直播栽培の安定化に活用できる。
- 適する田面硬度は、ゴルフボール貫入深で−1cmから2cmの範囲である。播種深さや覆土の状態を十分に確認しながら播種作業を行うこと。
- 岩手県内の黒ボク土、灰色低地土、グライ土の水田圃場(砂壌土〜埴壌土)において実証しているが、適応土壌については今後の課題である。また、側条施肥機の装着については未検討である。
- 本機は特許申請中(特願2008-304112:水田作業機の排水溝形成装置)であり、メーカー等への技術移転に際しては、岩手県との協議が必要である。
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名
- 水稲湛水直播栽培の収量安定化のための技術開発
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 2007〜2008年度
- 研究担当者
- 伊藤勝浩、日影勝幸、鶴田正明、及川一也