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収穫した玄米による籾数診断と窒素施肥量の設定
[要約]
米検査時の玄米を想定し、玄米収量、屑米重、玄米タンパク含有率、千粒重を変数とする籾数推定式から生産者の籾数レベルを簡易に診断できる。この籾数診断値から、適正な籾数範囲を得るための次年作の基肥窒素量を、現状に対する窒素成分の増減量として算出できる。
[キーワード]
玄米収量、千粒重、玄米タンパク含有率、籾数、窒素施肥量
[担当]
宮城古川農試・土壌肥料部
[代表連絡先]
電話0229-26-5107
[区分]
東北農業・基盤技術(土壌肥料)
[分類]
技術・参考
[背景・ねらい]
これまで、品質・食味を両立させるために適正な籾数レベルの指標を設定してきたものの、個々の生産者にとっては籾数の生産情報を得るのが難しい状況にある。また、窒素施肥量の設定に際して収量を基準とする場合が多いものの、収量と籾数はある範囲まで比例関係にあり籾数が過剰になれば収量変動が大きくなるので、目標籾数を基準とした施肥量設定の方がより汎用性があると考えられる。そのため、生産現場で簡単に取り組める籾数診断法が必要である。
そこで、収穫した玄米から簡便に籾数を推定し、適正な施肥量設定を行う診断法について検討する。
[成果の内容・特徴]
- 品種「ひとめぼれ」の籾数診断の手順は、まず始めに生産現場で簡易に入手できる項目である収量(ライスグレーダ網目LL収量)及び屑米重(粒厚1.9mm未満の米重)、粒厚1.9mm以上の玄米千粒重・玄米タンパク含有率を用いて、収穫した玄米から籾数を推定し、m2当たり籾数の適正範囲(ひとめぼれの場合28,000〜30,000粒)内に入るための籾数差を算出する。次に、基肥窒素量に対する籾数の増加割合から、次年作で目標籾数を得るために必要な窒素成分量を、現状の基肥窒素量に対する増減量として求める(図1)。
- 2002年から2008年までの「ひとめぼれ」試料から作成した籾数の推定モデル(式1)は、回帰の当てはまりが良く(自由度調整済み決定係数R2=0.950)、未知試料に対する推定誤差(RMSE)も1300粒程度で年次間差がなく幅広く利用できる(図2)。
- 基肥窒素施用量に対する「ひとめぼれ」の籾数増加の反応性は、全層施用した速効性の化学肥料窒素成分1kg/10aでm2当たり籾数が1500粒増加する関係にある。この関係から、現状籾数に対して増減すべき窒素成分量を算出でき、年次変動も考慮に入れた基肥窒素量の増減指標を作成することができる(図3)。
[成果の活用面・留意点]
- 籾数推定式の変数の影響度を標準偏回帰係数で比較すると、収量(0.65)、屑米重(0.58)、千粒重(0.19)、玄米タンパク(0.18)の順になり、推定精度を高めるためには収量、屑米重の情報が重要である。
- 「ひとめぼれ」以外の品種にも籾数推定式は適用できる。ただし、適正な籾数範囲、基肥窒素量に対する籾数の増加割合は、品種毎に設定する必要がある。
- 基肥窒素量と籾数の反応は速効性の化学肥料を全層施肥した結果に基づくものである。
- 「ひとめぼれ」の籾数は毎年同じ耕種・肥培管理を行っても±1400粒/m2程度の変動幅があるので、穂肥で籾数を調整する前提で基肥の窒素増減量を設定するのが望ましい。
[具体的データ]




[その他]
- 研究課題名
- 有機物及び地力の肥効パターンを考慮したブランド米づくり
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 2002〜2008年度
- 研究担当者
- 佐々木次郎、小野寺博稔