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水田内のアカヒゲホソミドリカスミカメ幼虫発生に関与する要因

[要約]

出穂期以降の水田内におけるアカヒゲホソミドリカスミカメ幼虫の発生には割れ籾の発生量が関与しており、割れ籾が多い水田では少ない水田と比較して、すくい取り幼虫数が多くなって斑点米率が高まる。また、割れ籾の登熟段階は本種幼虫の餌としての質に影響し、登熟の進んだ割れ籾を餌とした場合は、幼虫の生存、発育状況が劣る傾向にある。

[キーワード]

アカヒゲホソミドリカスミカメ、幼虫、割れ籾、斑点米

[担当]

山形農総研・農業環境研究部・環境技術開発科

[代表連絡先]

電話 023-647-3500

[区分]

東北農業・基盤技術(病害虫)

[分類]

技術・参考

[背景・ねらい]

東北地方の主要な斑点米カメムシであるアカヒゲホソミドリカスミカメは、出穂期以降の水田内で発生し、主に割れ籾を吸汁して発育している。そこで、割れ籾の発生量や登熟段階がアカヒゲホソミドリカスミカメ幼虫の発生に及ぼす影響について明らかにし、防除対策の資とする。

[成果の内容・特徴]

  1. 稲穂にアカヒゲホソミドリカスミカメ幼虫を放飼した場合、割れ籾数が増加するにしたがって幼虫生存率が高まる。ただ、出穂28日後の放飼では、データのばらつきが大きく、割れ籾数が多いにもかかわらず幼虫生存率が低い事例が見られる(図1)。
  2. 幼虫発育は、出穂21日後に比べ28日後放飼で遅れる傾向が見られる。また、割れ籾数が一定数以上ある場合、出穂28日後の幼虫生存率は21日後に比べて有意に低いことから、登熟の進んだ割れ籾はより登熟段階の若い割れ籾と比べて本種幼虫の餌としての質が劣ると考えられる(表1)。
  3. 割れ籾の発生が多い水田では少ない水田と比較して、すくい取り幼虫数が多くなり、斑点米率が高まる(図2、3)。
  4. 以上のことから、水田内における本種幼虫の生存および発育には、割れ籾の発生量が関与し、割れ籾の登熟段階は本種幼虫の餌としての質に影響すると考えられる。

[成果の活用面・留意点]

  1. 出穂前の気象条件等により割れ籾の多発が懸念される場合の防除対策の参考とする。
  2. 供試品種は「はえぬき」である。
  3. 図2〜3は、平成20年の山形県農業総合研究センター農業環境研究部内ほ場(山形市みのりが丘)における調査結果である。斑点米カメムシ類の優占種はアカヒゲホソミドリカスミカメであった。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
斑点米カメムシ発生予察技術の高度化と斑点米被害抑制技術の開発
予算区分
実用技術
研究期間
2006〜2008年度
研究担当者
吉村具子、越智昭彦
発表論文等
北日本病害虫研究会報 59:113-115