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積雪地域におけるクロルピクリン剤を用いた晩秋期土壌消毒によるホウレンソウ萎
[要約]
積雪地域における晩秋期のクロルピクリンくん蒸剤による土壌消毒は、翌年の3月下旬まで被覆を行うことにより、夏期の土壌消毒と同等のホウレンソウ萎凋病に対する防除効果を示し、6〜7月の連続作付けを可能にする。
[キーワード]
クロルピクリン、萎凋病、晩秋期、土壌消毒、ホウレンソウ、積雪地域
[担当]
秋田農技セ農試・生産環境部
[代表連絡先]
電話018-881-3330
[区分]
東北農業・基盤技術(病害虫)
[分類]
技術・普及
[背景・ねらい]
ホウレンソウは秋田県で広く栽培されているが、その栽培は県南部の仙北、平鹿地域に集中しており、大部分は施設栽培である。産地では年間4〜5回の連続作付けが行われているが、連作が進むにつれ夏期(7〜8月)のホウレンソウ萎凋病の発生が問題となっている。一般に各種土壌消毒は地温を確保しやすい6〜7月頃に行われるため、土壌消毒が行われた場合、夏期の作付けが制限される。そこで、夏期の作付け回数を確保するために、作付け終了後の10月下旬から11月上旬の積雪前にクロルピクリンくん蒸剤のかん注処理を行い、翌年3月下旬まで被覆してホウレンソウ萎凋病を防除する方法を検討する。
[成果の内容・特徴]
- クロルピクリンくん蒸剤による晩秋期土壌消毒の作業手順は、晩秋期(地温15℃前後を約10日確保)の収穫終了後に薬剤をかん注(2〜3ml/穴、30cm間隔)し、フィルム(厚さ0.05mm以上)で地表面を被覆し、積雪前に天井フィルムを除去し、翌年の消雪後(3月下旬)に被覆フィルムの除去、天井フィルムを設置する(図1)。
- 10月下旬にクロルピクリンくん蒸剤をかん注後、翌年の3月下旬まで被覆を行う晩秋期消毒は、処理後3作目まで発病を低く抑える(表1)。
- 晩秋期消毒を行った現地圃場では、消毒後2作目終了時で、菌密度の増加が認められるが、低い密度であり、高い可販株率が持続する(図2)。
- 2、3の結果より晩秋期消毒は6〜7月の連続作付けを可能にする(図3)。
[成果の活用面・留意点]
- 積雪があり、作付けを行わない晩秋期〜冬期間に消毒・被覆作業する。また、消毒作業を低温期に行うため、刺激臭が発生しにくい。
- ハウス天井フィルムと被覆フィルムの設置条件下で、本剤の十分な揮発・拡散に必要な地温(15℃前後)が約10日間確保できる晩秋期にかん注作業を行う(秋田県の場合、10月下旬〜11月上旬)。
- 土壌消毒後、高温期である6月作付けの終了時では菌密度の増加が見られたことから、次年度の作付けの際には土壌消毒が必要である。
- クロルピクリンくん蒸剤の使用に際しては、薬剤容器のラベル記載の注意事項に従う。
[具体的データ]
[その他]
- 研究課題名
- 園芸作物病害虫の環境保全型防除技術の開発
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 2004〜2008年度
- 研究担当者
- 藤井直哉、山本英樹、佐山 玲(協力:平鹿地域振興局農林部普及指導課)