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リンゴとモモで防除を共通化することにより、効率化が図れる
[要約]
リンゴとモモの共通防除体系は、薬剤の共通化や散布回数の削減、散布日の共通化により防除の効率化が図れる。また、薬液飛散の危険性を低減し、両樹種の主要病害虫を防除できる。
[キーワード]
樹種複合、リンゴ、モモ、共通防除、効率化
[担当]
福島農総セ・果樹研・病害虫科
[代表連絡先]
電話024-542-4199
[区分]
東北農業・果樹
[分類]
技術・普及
[背景・ねらい]
リンゴとモモの樹種複合園の防除において、薬剤の共通化や散布回数を削減し、防除作業の効率化および薬液飛散の危険性の低減を図ることができるリンゴとモモの共通防除体系を開発する。
[成果の内容・特徴]
- 共通防除体系では、両樹種で共通化できる薬剤数は18剤となり、年間使用薬剤のうち約7割を共通化できる(表1、表2)。
- 共通防除体系の散布回数は、リンゴは13回、モモは14回であり、慣行防除体系に比べリンゴで2回、モモで3回削減できる(表1、表2)。これは、両樹種の主要病害虫に防除効果の高い薬剤を利用することで、15 日の散布間隔が可能となるためである。
- 共通防除体系では、リンゴとモモで共通の散布日が12回あり、そのうち5回は薬剤を完全に共通化できる(表1、表2)。また、5回は薬剤が一部共通化しており、共通薬剤のみを散布する樹種を先に防除することで、スピードスプレーヤのタンクの洗浄を省力化できる。
- 共通防除体系を用いたリンゴの防除において、モモに未登録の薬剤は1剤、モモの防除において、リンゴに未登録の薬剤は1剤、登録はあるが希釈倍数が異なる薬剤は1剤あるが、慣行防除体系と比較して薬液飛散の危険性を低減できる(表1、表2)。
- 両樹種の主要病害虫に対する防除効果は、共通防除体系と慣行防除体系で同等である(表3、表4、新梢葉における主要病害虫に対する防除効果はデータ省略)。
[成果の活用面・留意点]
- 本成果は、2009年12月25日現在の登録内容に基づいて作成した。
- 例年モモせん孔細菌病の発生が認められない地域では、表1において( )を付した薬剤の散布を省略でき、さらなる共通化を図ることができる。しかし、防除開始後にせん孔細菌病が発生した場合は、その後( )を付した薬剤を散布する。
- 共通防除体系の対象病害虫は、リンゴではうどんこ病、斑点落葉病、黒星病、褐斑病、すす点・すす斑病、輪紋病、炭疽病、キンモンホソガ、ギンモンハモグリガ、ハマキムシ類、シンクイムシ類、カイガラムシ類およびハダニ類である。モモでは、せん孔細菌病、黒星病、灰星病、ホモプシス腐敗病、炭疽病、ナシヒメシンクイ、ハマキムシ類、モモノゴマダラノメイガ、モモハモグリガ、コスカシバおよびハダニ類である。この病害虫以外が発生する地域では、特別な対策が必要となる場合がある。
- 共通防除体系の殺虫剤については、複合交信かく乱剤の使用を前提とする。
- 共通防除体系は、リンゴは全品種を、モモは中生種および晩生種を対象とする。
- 慣行防除体系は、2009 年に現地実証試験を実施した地域のものである。
- 関連する研究成果情報:平成21年度「異なる樹種への共通防除体系は生産者にとって経営への導入メリットがある」
[具体的データ]




[その他]
- 研究課題名
- 東北地域における農薬50 %削減リンゴ栽培技術体系の確立
- 予算区分
- 交付金プロ(農薬削減リンゴ)
- 研究期間
- 2005 〜 2009 年度
- 研究担当者
- 藤田剛輝、三瓶尚子、穴澤拓未、尾形正、菅野英二、瀧田誠一郎、相原隆志