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8〜9月の薬剤選択に基づくリンゴすす斑病の効果的な防除対策

[要約]

リンゴすす斑病は、8 月上旬にトリフロキシストロビン水和剤、8 月下旬にイミノク タジン酢酸塩液剤、9 月中旬(最終散布)にフルオルイミド水和剤、キャプタン水和剤およ びキャプタン・ホセチル水和剤を選択することにより、効果的に防除できる。

[キーワード]

リンゴ、すす斑病、薬剤選択、防除回数削減

[担当]

岩手農研・環境部、東北農研・省農薬リンゴ研究チーム

[代表連絡先]

電話0197-68-4424

[区分]

東北農業・果樹

[分類]

技術・参考

[背景・ねらい]

リンゴすす斑病は、果面に汚れを生じ果実の商品価値を著しく低下させる病害であり、晩生種の被害が多い。本病の防除対策として、晩生種ではキャプタン剤による9 月上旬と9月中旬の特別散布(平成2 年度研究成果情報)が示されているが、近年は早生種へのドリフトを懸念して収穫前日数の短い別系統の薬剤が使用されることが多くなっている。また、本病の発生が例年多い園地では、9 月下旬以降も薬剤防除が実施されている。そこで、本病に対する効果的な防除法を確立するために、薬剤の特性に基づく効果的な散布時期を検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. リンゴすす斑病に対する各種薬剤の特性に基づく効果的な散布時期は以下のとおりである。
    1. 8 月上旬:トリフロキシストロビン水和剤(商品名:フリントフロアブル25)2,000倍を散布することにより、9 月の果実感染量を減少させることができる。(表1
    2. 8 月下旬:イミノクタジン酢酸塩液剤(ベフラン液剤25)1,500 倍は残効性に優れる。(図1
    3. 9 月中旬(最終散布):病斑の進展を抑える薬剤としてフルオルイミド水和剤(商品名:ストライド顆粒水和剤)1,500 倍、キャプタン水和剤(オーソサイド水和剤80)800 倍およびキャプタン・ホセチル水和剤(アリエッティC 水和剤)800 倍の防除効果が高い。(表2
  2. 特別散布を9 月上旬と9 月中旬の2 回実施する散布体系においては、9 月中旬(最終散布)に上記薬剤を選択する。本防除体系でも例年発生が多い園地では8 月上旬と9 月中旬に上記薬剤を選択する。(表3
  3. 特別散布を9 月中旬に1 回実施する散布体系においては、8 月上旬、8 月下旬および9月中旬に上記薬剤を選択することで、特別散布を2 回実施する散布体系とほぼ同等の防除効果が認められる。(表3

[成果の活用面・留意点]

  1. 岩手県ではすす斑病の発生が例年多いので、9 月上旬と9 月中旬の2 回の特別散布を基本とし、その防除体系において上記薬剤を選択する。
  2. 9 月上旬の特別散布の省略は、リンゴすす斑病だけでなく褐斑病等の他の病害の発生リスクを考慮したうえで実施すること。
  3. 防除効果を高めるために、不要な徒長枝を整理し薬液が樹全体に十分かかる樹形に整える。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
東北地域における農薬50%削減リンゴ栽培技術体系の確立
予算区分
交付金プロ(農薬削減リンゴ)
研究期間
2005〜2009 年度
研究担当者
猫塚修一、足立嘉彦(東北農研)