研究所トップ≫研究成果情報≫平成21年度
ニホンナシ新品種「秋泉」の育成
[要約]
ニホンナシ新品種「秋泉」は10 月上〜中旬(満開160 日前後)に収穫可能な晩生種である。果実重は平均で700g 程度の大果であり、糖度は、「幸水」や「豊水」より高く、酸味は「幸水」並みで、果汁が多く甘みが際立つ食味である。主要な栽培品種とは交雑和合性である。
[キーワード]
ニホンナシ、新品種、「秋泉」、晩生種
[担当]
秋田農技セ・果試・天王分場班
[代表連絡先]
電話018-878-2251
[区分]
東北農業・果樹
[分類]
技術・普及
[背景・ねらい]
「幸水」に偏ったニホンナシの品種構成を是正するため、収穫作業の分散化が可能となる良食味の晩生種を育成する。
[成果の内容・特徴]
- 育成経過
- 本品種は、1993 年に「新星」に「豊水」を交雑し、2003 年に1次選抜され、2004年から現地試験を開始した。
- 2007 年の10 月に県職務育成審査会の承認を得て品種登録申請を行い、2009 年2月26 日に品種登録された。
- 特性
- 樹勢は強勢で、樹姿は種子親の「新星」に似る。腋花芽の着生は「豊水」並に優れる。
- 本品種は「幸水」、「豊水」、「長十郎」、などの栽培品種と交雑和合性であるが、開葯しても花粉は僅かしか生じないため受粉樹として利用はできない。
- 開花期は、「新星」並に早く、収穫期は育成地(潟上市)では10 月上旬(満開160日前後)で収穫前落果は認められない。
- 果実の外観は円形であるが、若木では種子親の「新星」の特徴(ていあ部が突出した果形)を呈することがある。果皮色は黄赤褐色で、赤ナシに分類される(図1)。
- 果実の大きさは、平均果重で700 g程度で極めて大きい(表1)。
- 糖度は、主要品種「幸水」、「豊水」より高く、酸味は「幸水」並で、果汁も多く甘みが際立つ食味である(図2)。また、果心部の大きさを示す特性値(果芯横径/果実横径)は、交雑親の「豊水」が0.37、「新星」が0.33 に対し、本品種は0.28 と可食部が多い。
[成果の活用面・留意点]
- えそ斑点病に対して感受性であるため、高接ぎ更新をする際は保毒していない樹に実施する。
- 年により果梗基部の裂開や紫変色枝枯れ症の発生が認められる。
- 日持ち性は、室温で2〜3週間程度で、同時期に収穫される「新星」並である。
- 一般的な中晩生種(「豊水」、「あきづき」等)に準じた防除管理において、特に問題となる病害虫の発生は認められない。
- 苗木の販売は、当分の間、秋田県内のみに限る。
[具体的データ]



[その他]
- 研究課題名
- 寒冷地に適応したナシ・ブドウの新品種育成
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 1988 〜 2007 年度
- 研究担当者
- 長澤正士、柴田雄喜、田口辰雄、原加寿子、瀬田川守、嵯峨清、藤井芳一、小野早人
- 発表論文等
- 品種登録(2009.2.26)、登録番号「第17563 号」