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良食味で、いもち病圃場抵抗性が強い水稲新品種「山形95号」の育成
[要約]
「山形95号」は、“中生の晩”の粳種で、いもち病圃場抵抗性が、葉いもち・穂いもち
ともに「はえぬき」より明らかに強い。玄米千粒重が「はえぬき」に比べてやや重く、収量
性は「はえぬき」をやや上回る。食味は「はえぬき」並に良好である。
[キーワード]
イネ、山形95号、いもち病圃場抵抗性、良食味
[担当]
山形農総研セ・水田農試・水稲研究科
[代表連絡先]
TEL 0235-64-2100
[区分]
東北農業・作物(稲育種)
[分類]
技術・普及
[背景・ねらい]
近年、全国的に米価の低迷が続いている中で、良質で良食味の米を安定的に供給できる産地づくりを進めることによって、県産米の評価向上を図っていく必要がある。また、県内における有機栽培は、個々の農家の取り組みから、最近では組織的・地域的な取り組みまで拡大してきている。そこで、より安全で安心な美味しい米を求める消費者のニーズに対応が可能な、収量・品質・食味が安定して優れ、かつ農薬使用量を削減できる品種を育成する。
[成果の内容・特徴]
- 「山形95号」は、本県の主力品種となる、いもち病圃場抵抗性“強”の良食味品種の育成を目標に、「山形59号」を母、「奥羽366号(後の「ちゅらひかり」)」を父として1998 年に人工交配を行い、その後代から育成した品種である。
- 出穂期は「はえぬき」より1 日早く、成熟期は「はえぬき」並の、育成地では“中生の晩”に属する粳種である(表1)。
- 稈長は「はえぬき」より長い“中稈”で、穂長はやや長く、穂数は並である。草型は“中間型”で、耐倒伏性は“中”である(表1)。
- いもち病真性抵抗性遺伝子型は“Pia”と推定され、圃場抵抗性は、葉いもち・穂いもちともに“強”である。障害型耐冷性は“極強”、穂発芽性は“やや難”である(表1)。
- 穂いもちが激発する検定圃場における生産力検定試験の結果は、「はえぬき」に比べて穂いもち被害度が低く止まり、収量を比較的安定して確保できる(図1)。
- 玄米千粒重が「はえぬき」に比べてやや大きく、収量性は「はえぬき」「ひとめぼれ」にやや優る(表1、表2)。外観品質は、白未熟粒の発生が少なく、「はえぬき」並に良質である(表1)。
- 精米アミロース含有率および味度は「はえぬき」並であるが、精米粗タンパク質含有率は「はえぬき」より低い。食味は、特に炊飯光沢が優れ、「はえぬき」並の良食味である(表1)。
[成果の活用面・留意点]
- 適応地帯は山形県平坦〜中山間地域で、普及面積は1,000ha が見込まれる。
- 葉いもち・穂いもち圃場抵抗性がともに「強」であることから、特別栽培・有機栽培に向く。
- 耐倒伏性が「中」であることから、良質・良食味米の生産のため、多肥栽培を避ける。
[具体的データ]



[その他]
- 研究課題名
- 第IV期水稲主力品種の育成
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 1998 年〜2009 年度
- 研究担当者
- 佐野智義、結城和博、齋藤信弥、森谷真紀子、佐藤久実、中場勝、櫻田博、本間猛俊、渡部幸一郎、水戸部昌樹、宮野斉、中場理恵子、横尾信彦、後藤元、齋藤久美