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堆肥の主原料と全窒素含量に基づいた水田での窒素有効化率判断指標

[要約]

堆肥中の全窒素に対するアンモニア態窒素と易分解性有機態窒素の合計割合を窒素有効化率として施用することにより,化学肥料に近い肥効が期待できる。これらの値は堆肥の主原料と全窒素含量により区分できることを利用し,有効化率簡易判断指標を作成できる。

[キーワード]

易分解性有機態窒素,水稲,堆肥,有効化率,全窒素含量

[担当]

宮城古川農試・土壌肥料部

[代表連絡先]

電話0229-26-5107

[区分]

東北農業・基盤技術(土壌肥料)

[分類]

技術・普及

[背景・ねらい]

近年の環境保全型農業への関心の高まりに加え,化学肥料原料価格が今後も高留まりが続く懸念から,堆肥を活用して化学肥料を減肥する取組が増加している。その際,堆肥の原料が多種多様であるため施用量の基準となる窒素有効化率の決定方法が課題であった。そこで,堆肥中の有効態窒素の形態別測定値に基づく施用量の決定方法を検証するとともに,これらの値を用いた簡易肥効判断指標の作成を検討した。

[成果の内容・特徴]

  1. 堆肥を活用して化学肥料を減肥した栽培において,堆肥中の全窒素に対するアンモニア態窒素と易分解性有機態窒素(尿酸および尿酸以外のリン酸緩衝液抽出窒素)の合計割合を窒素有効化率とみなし,化学肥料とほぼ同等の窒素供給量となるように施用することにより,化学肥料を主に施用した対照区とほぼ同等の玄米収量と品質を確保できる(表1)。
  2. 宮城県内で流通している各種堆肥(複数畜種の堆肥を含む)の全窒素含量と窒素有効化率との関係をみると,原料の主体が牛ふんのものと鶏ふんのものでは正の相関関係が認められるのに対し,豚ぷん主体のものと食品残さ主体のものでは全窒素含量に関係なく有効化率30%近辺が多い(図1)。
  3. 上記の関係から,牛ふん主体と鶏ふん主体堆肥については全窒素含量別,豚ぷん主体と食品残さ主体については単一の値を用いて窒素有効化率を区分し,判断指標とする(図2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 化学肥料をほぼ無施用として堆肥中心とした場合,籾数が少なくなり玄米収量が低下する場合があるほか(表1),堆肥の散布むらや窒素含量のばらつきなどの影響を受けやすくなるため,堆肥による化学肥料の代替割合は5割以下とし,有効化率が低いものほど代替割合を小さくする。また,多様な原料が想定される食品残さ堆肥は有効化率が想定と大きくずれる場合もあり得るので,より小さめの代替割合としたほうが安全である。
  2. 豚ぷん主体堆肥や窒素2%未満の鶏ふん主体堆肥のようにアンモニア態窒素の割合が多い堆肥では,堆肥施用から代かきまでの期間が長くなるほど硝酸化成により肥効が低下しやすいため,この期間をできるだけ短くする必要がある。
  3. 塩酸で抽出したアンモニア態窒素はリン酸マグネシウムアンモニウムを含む画分であり,リン酸緩衝液抽出有機態窒素は施用後の積算気温で約1000度Cまでに無機化する画分である。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
食品廃棄物含有たい肥の有機質窒素肥料としての活用実証事業,肥料費低減技術開発普及事業
予算区分
県単
研究期間
2008〜2009 年度
研究担当者
瀧 典明,佐々木美和(宮城石巻農改),上山啓一(宮城農園研)
発表論文等
瀧ら(2009)土肥誌,80:575-582