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黒毛和種肥育前期におけるトウモロコシサイレージ多給が産肉性に及ぼす影響
[要約]
肥育前期(15 ヶ月齢まで)にトウモロコシサイレージを多給すると、肥育全期間において配合飼料を10%程度削減でき、配合飼料を多給した場合と同等の発育、枝肉成績が得られる。
[キーワード]
黒毛和種、肥育牛、前期粗飼料多給
[担当]
岩手畜研・家畜育種研究室
[代表連絡先]
電話019-688-4328
[区分]
東北農業・畜産
[分類]
技術・参考
[背景・ねらい]
肥育前期(10-15 ヶ月齢)は、中後期における配合飼料の大量摂取に備え第一胃の発達を促す時期であり、粗飼料の十分な摂取が重要であることが知られている。粗飼料としてのトウモロコシサイレージは、脂肪の黄色化やビタミンA 制限の問題、さらに農家では入手が困難なことから、肥育での利用は少ない現状にある。しかし、近年、ラップサイレージの普及によりトウモロコシサイレージの流通が可能となり、飼料自給率向上の点からもその利用が期待されている。
そこで、慣行である配合飼料多給や乾草主体の前期配合飼料制限に比較して、前期にトウモロコシサイレージを多給した場合の発育、肉質に及ぼす影響について検討する。
[成果の内容・特徴]
- 肥育前期(15 ヶ月齢まで)にふすまを2〜3kg/日と制限し、トウモロコシサイレージを多給した場合、前期の粗飼料摂取率(DM)は65%となり、配合飼料多給に比較して前期の増体はやや劣り、乾草主体とする配合飼料制限の場合(体重比1%、粗飼料摂取率55%)とほぼ同等の増体となるが、中後期に配合飼料を多給することで伸び、肥育終了時には全期間配合飼料を多給した場合とほぼ同等の体重となり、枝肉成績にも差はない(表1、表2、図1)。
- 肥育全期間における粗飼料摂取率は、配合飼料制限の25%、配合飼料多給の20%に比較し、トウモロコシサイレージ多給は26%となり、配合飼料多給に比べ配合飼料を約10%削減できる(表1)。
- トウモロコシサイレージ多給は、配合飼料多給及び制限に比較して血中ビタミンA濃度がやや高めに推移するが、肥育中期から粗飼料を稲ワラに切り替えることで配合飼料多給及び制限の場合と同様の傾向で低下する(図2)。
[成果の活用面・留意点]
- 試験牛は、育成用飼料、乾草、稲ワラで育成されたため、試験開始前にトウモロコシサイレージへの馴致を行った。また、各試験区は菊茂勝、第3原茂の産子を同数配置した。
- 前期トウモロコシサイレージ多給肥育の経営的な有利性は、配合飼料とトウモロコシサイレージの流通単価に影響されるが、本試験の例ではトウモロコシサイレージ15円/kg の場合、配合飼料30 円/kg 以上のときに飼料費が安くなる。
[具体的データ]




(米澤智恵美)
[その他]
- 研究課題名
- 肥育前期に粗飼料を多給した黒毛和種肥育技術の確立
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 2006〜2009 年度
- 研究担当者
- 米澤智恵美