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早生で耐冷性が強く良食味の水稲新品種候補「秋田96号」の育成
[要約]
水稲「秋田96号」は“早生の早”の粳種である。同熟期の「でわひかり」、「たかねみのり」と比較し、いもち病圃場抵抗性、耐冷性ともに強く、収量性も高い。玄米は良質で、食味は「あきたこまち」並に良好である。
[キーワード]
イネ、秋田96 号、早生、耐冷性極強、良質、良食味
[担当]
秋田農技セ農試・作物部
[代表連絡先]
電話018-881-3330
[区分]
東北農業・作物(稲育種)
[分類]
技術・参考
[背景・ねらい]
秋田県では中山間地域向けとして早生品種の「でわひかり」、「たかねみのり」を奨励しているが、耐冷性、耐病性、食味が不十分であるため作付けが減少している。そこで、「でわひかり」、「たかねみのり」に替わる早生品種として、「あきたこまち」並の食味で耐冷性、耐病性の強い品種を育成する。
[成果の内容・特徴]
- 水稲「秋田96 号」は、秋田県農林水産技術センター農業試験場において早生の耐冷・耐病・良食味品種を目標とし「岩南16 号(いわてっこ)」を母、「秋系483」を父として1999 年に人工交配を行い、その後代より育成した系統である。
- 出穂期、成熟期ともに「でわひかり」より1日程度遅く、育成地では“ 早生の早” に属する(表1)。
- 稈長、穂長ともに「でわひかり」より長く「たかねみのり」並である。穂数は「でわひかり」、「たかねみのり」より多く、草型は“ 穂数型” に属する。耐倒伏性は「でわひかり」より弱く「たかねみのり」並の“ やや強” である。籾にはやや短芒を生じ、穎色は“ 黄白”、ふ先色は“白” である(表1)。
- いもち病真性抵抗性遺伝子型は“ + ” であると推定され、圃場抵抗性は葉いもちが「でわひかり」より強く「たかねみのり」並の“ やや強”、穂いもちが「でわひかり」、「たかねみのり」よりも強い“ 強” である。耐冷性は「でわひかり」、「たかねみのり」よりも強く“ 極強”、穂発芽性は「でわひかり」、「たかねみのり」よりし難い“ 難”である(表1)。
- 収量性は「でわひかり」、「たかねみのり」より優る(表1)。玄米は千粒重が「でわひかり」よりやや大きく、品質は「でわひかり」、「たかねみのり」並に良好で“ 上中” である(表1、写真1)。
- 玄米粗タンパク質含有率は「でわひかり」、「たかねみのり」より低い(表1)。
- 食味は「あきたこまち」並の“上中” である(表1)。
[成果の活用面・留意点]
- 「でわひかり」、「たかねみのり」に替えて秋田県の奨励品種候補として検討中である。そのため、2011 年に種苗法に基づく品種登録の出願を予定している。
- 適応地帯は秋田県内中山間地域を中心に、5,000ha 程度の普及が見込まれる。
- 穂数が多く紋枯病の発生がやや多いため、適期防除に努める。
- 耐倒伏性が「でわひかり」より弱いため、多肥栽培は避ける。
[具体的データ]


(秋田県農林水産技術センター農業試験場)
[その他]
- 研究課題名
- 第3期次世代銘柄米品種の開発
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 1999 〜 2010 年
- 研究担当者
- 川本朋彦、加藤和直、小玉郁子、松本眞一、佐藤雄幸