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水質改善対策技術導入による八郎湖水質(COD)の20年後の将来予測

[要約]

これまで指定試験事業で取り組んだ対策技術を組み合わせ、八郎湖水質への影響を将来予測すると、無対策では現状水質より悪化するが、流域水田で特栽米栽培普及率と対策実行率が共に100%の場合、20 年後の灌漑期では、COD で12%程度水質改善される。

[キーワード]

水質汚濁、代かき、無代かき、シミュレーションモデル、有機質資材

[担当]

秋田農技セ農試・生産環境部・環境調和担当

[代表連絡先]

電話018-881-3330

[区分]

東北農業・基盤技術(土壌肥料)

[分類]

行政・参考

[背景・ねらい]

閉鎖水系地帯にある八郎潟残存湖(八郎湖)は2007 年12 月に湖沼法による指定湖沼となり、その集水域内水田では、代かき濁水の発生がない無代かき栽培等の環境保全型農業技術の導入による水質汚濁物質排出抑制が期待されている。一方で、消費者ニーズと肥料高騰の両面から、有機質資源を利用した特別栽培(減農薬減化学肥料栽培)米面積が増加、その施用による水質負荷の増加が起こることを明らかとしてきたところであり(無代かき栽培の普及が八郎潟残存湖の水質に及ぼす影響の評価、平成18 年度東北農業研究成果情報)、かつ、その対策技術を構築してきたところである。そこで、特別栽培普及率に応じた八郎湖水質への影響及び、これまでに構築してきた対策技術を組み合わせ、流域内水田へ特別栽培や対策技術を普及させたときの八郎湖水質への影響を検討する。評価対象をCOD とし、20 年後の定量的な水質改善効果について、八郎湖水質シミュレーションモデルにより予測する。

[成果の内容・特徴]

  1. これまでの指定試験事業において、定量的な水質汚濁負荷削減効果を明らかとした水質改善対策技術の排水路水質(COD)改善率は表1の通りであり、表2図1に示した想定ケースにおいて、灌漑期における対策技術導入による八郎湖(八郎潟調整池)のCOD 水質改善効果として、20年後の水質予測を行う。
  2. その結果、特別栽培普及面積が増えて、水質改善については無対策(ケースA-1~3)の場合、現状水質より悪化する予想となる一方、無代かき等の各種対策を行うことで水質改善が可能であることが示される(ケースB~D)。流域の特栽米栽培普及率100%となっても、流域水田で各種対策実行が実施される場合、灌漑期のCOD は0.7mg/L 程度低下し、流域の負荷状況を現状維持(ケースE)とした場合に比べ、12 %程度水質改善される予測結果を示す(図1)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 有機質資材の種類や分解率の違いによって、水質汚濁負荷程度が異なる可能性がある。今回シミュレートする前提として、米ぬか、モミガラ、くずダイズなどを主成分とする有機質資材を使用した特別栽培米を対象としている。
  2. 八郎湖水質シミュレーションモデルは、秋田県が(株)日水コンに開発を委託したもので、八郎湖を構成する調整池、東部承水路、西部承水路での水の流動と水収支、流域の農業や産業、自然系の排出源を含む排出負荷等を再現するよう構築した鉛直一次元モデルである。

[具体的データ]

(秋田県農林水産技術センター)

[その他]

研究課題名
閉鎖水系水田地帯における畜産由来有機性資源の循環利用に伴う環境負荷物質の動態解明と環境負荷低減技術の開発
予算区分
指定試験
研究期間
2006 ~ 2010 年度
研究担当者
渋谷岳、原田久富美、伊藤千春、林雅史、嶋国吉(日水コン)、高井貢(日水コン)、塚原純哉(日水コン)、和泉征仁(日水コン)、山崎幸司(日水コン)、小林ひとみ、谷口吉光(秋田県立大学)、佐藤孝(秋田県立大学)、金田吉弘(秋田県立大学)