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土壌病害抵抗性台木を用いた青枯病を回避するパプリカの接ぎ木栽培技術

[要約]

台木用品種である「台パワー」や「台助」は、山形県内パプリカ産地から分離された青枯病菌株に対して高い抵抗性を有する。これらを台木に用いた接ぎ木栽培では、自根栽培に比べて平均果重が10%程度小さくなるが、収量性に大きな差はない。

[キーワード]

パプリカ(カラーピーマン)、青枯病、接ぎ木栽培、果実品質、収量

[担当]

山形県庄内総合支庁農業技術普及課産地研究室

[代表連絡先]

電話0234-91-1250

[区分]

東北農業・野菜花き(野菜)

[分類]

技術・普及

[背景・ねらい]

パプリカの栽培品種は、土壌病害に対する抵抗性がほとんどなく、接ぎ木栽培に対する期待が高まっている。パプリカの接ぎ木栽培では、トウガラシやピーマン類の台木品種を用いる必要があるが、完熟果で収穫するパプリカに関する知見は非常に少ない。そこで、病害抵抗性台木を用いたパプリカの接木栽培の確立のため、山形県内で採取された青枯病菌に対する抵抗性評価と、接ぎ木栽培を行った場合の果実品質や生産性について評価した。

[成果の内容・特徴]

  1. 山形県内パプリカ産地から分離された青枯病菌株を用いて接種試験を行ったところ、「台パワー」と「台助」では、罹病株が確認されず、本病の防除上、実用性が高い。一方、従来、台木品種として利用していた「伏見甘長」ではわずかに発病がみられ、「台パワー」、「台助」よりも抵抗性が劣る(表1図1)。
  2. ナス科野菜を連作するなどで青枯病菌の密度が高いと考えられる現地の圃場においては、「台パワー」や「台助」を台木にした場合でも罹病株が確認されているため(表2)、輪作体系を組む、排水対策をとるなどの物理的な防除方法も組み合わせる。
  3. 「台パワー」や「台助」を台木に用いたパプリカの接ぎ木栽培では、自根栽培に比べて平均果重が10%程度小さくなる。しかし、着果数がほぼ同等からやや増加するため、収量性に大きな差はない。また、糖度、酸度、硬度などの果実品質は、自根栽培と差がない(表3)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 「台パワー」、「台助」ともに、PMMoV 抵抗性遺伝子としてL3を有しているため、同じL3遺伝子を有する品種(「フェアウェイ(黄)」、「フェラーリ(赤)」、「クプラ(赤)」など)との接ぎ木が望ましい。

[具体的データ]

(山形県庄内総合支庁農業技術普及課産地研究室)

[その他]

研究課題名
トウガラシ用台木品種によるパプリカの土壌病害回避技術の確立
予算区分
受託
研究期間
2008〜2009 年度
研究担当者
古野伸典
発表論文等
園芸学研究第8巻別冊1,P122,2009、園芸学研究第8巻別冊2,P242,2009