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分娩前にデジタル糖度計で乳房炎の予察ができる

[要約]

経産牛では、デジタル糖度計を用いて測定した分娩前乳汁のBrix 値(水溶液中に含まれる可溶性固形分の濃度)から、分娩後の乳房炎の発症、あるいは体細胞数が多くなる牛を予察することが可能である。さらに、感受性の抗生剤で分娩前治療を実施することで分娩後の乳房炎発症を抑制し、体細胞数を低減することができる。

[キーワード]

デジタル糖度計、分娩前乳汁、Brix 値、乳房炎、予察、分娩前治療、体細胞数

[担当]

福島県農業総合センター畜産研究所

[代表連絡先]

電話024-593-1222

[区分]

東北農業・畜産

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

乳房炎は、分娩後3週間以内での発症が多く、治療、別搾り、生乳廃棄等労力の負担増や経済的損失が大きい疾病である。乳房炎発症を早期に予察し対処することで生産性が向上することから、分娩前の乳房炎発症予察技術の開発及び分娩前治療効果を検証する。

[成果の内容・特徴]

  1. デジタル糖度計を用いることで、乳汁のBrix 値は容易に測定ができ、数値表示であるため、誰でも、迷うことなく、同じ判定ができる。
  2. 分娩前乳汁のBrix 値は8.2〜51.4%の範囲にあり、分娩後21 日目までに乳房炎を発症した分房では8.6〜21.4%の範囲で低値に偏る(図1)。
  3. 分娩前乳汁でBrix 値が25%以下の分房をもつ牛に、分娩後最初の牛群検定で、個体乳の体細胞数(SCC)が7万/ml 以上となる牛が偏在する(図2)。即ち、分娩前乳汁でBrix 値25%以下の分房があれば、7 割以上で分娩後に乳房炎を発症、あるいは、SCCが7 万/ml 以上となり、Brix 値25%以下の分房をもたない牛は全てSCC は7 万/ml 以下となった。
  4. 分娩前乳汁の予察をCMT 変法でおこなうと、陽性判定分房に乳房炎発症牛が偏在したが、全分房陰性判定牛でもSCC が7万/ml 以上となる牛も含まれた(図3)。
  5. 分娩前乳汁の性状がアメ状ならば、Brix 値は30%以上である(図4)。このことから、分娩前乳汁がアメ状ならばBrix 値は30%以上とみなすことができ、糖度計での測定は必要としない。
  6. 分娩前乳汁のBrix 値が全分房で25%以上の牛を「低リスク牛」、それ以外を「高リスク牛」とすると、乾乳前の個体乳のSCC は「低リスク牛」が「高リスク牛」に比べ低い。この「高リスク牛」に対して、検出菌に感受性のある抗生剤で分娩前治療を実施することで、分娩後の乳房炎発症を抑制し、SCC を減らすことができる(図5)。

[成果の活用面・留意点]

  1. デジタル糖度計はアタゴ社製ポケット糖度・屈折計(液体濃度計)を用いた。
  2. 分娩前乳汁検査は、乳汁性状がアメ状以外の分房について糖度計でBrix 値を測定する。そして、25%以下の分房があれば、当該分房乳の細菌学的検査をおこない、感受性を確認の上、泌乳期用乳房炎軟膏による分娩前治療を行うことで分娩後の乳房炎発症を抑制し体細胞数を低減できる。
  3. 分娩前検査は分娩予定の10 日前に実施した。
  4. 分娩前検査では乳頭(特に乳頭口)をきれいにすること。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
乳房炎の早期診断及び治療による生産性向上
予算区分
県単
研究期間
2009〜2012 年度
研究担当者
齋藤美緒、山本みどり、伊藤 等、生沼英之、矢内清恭