研究所トップ研究成果情報平成23年度

キクの電照栽培においてLED電球は白熱電球の代替資材となりうる

[要約]

キクの電照栽培において、市販の白色LED 電球や赤色LED 電球を用いて長日処理を行うことで、白熱電球と同等に開花が抑制され、切り花品質はほぼ同等になる。白色LED 電球と赤色LED 電球は、白熱電球の代替電照資材として実用性が認められる。

[キーワード]

キク、LED、開花抑制、電照栽培、暗期中断

[担当]

秋田県農技セ農試・野菜・花き部・花き担当

[代表連絡先]

電話018-881-3330

[区分]

東北農業・野菜花き(花き)

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

キク生産は、お盆や年末の需要期出荷のために、白熱電球を用いた長日処理により花芽分化・発達を抑制し、開花調節を行う方法が一般的である。将来的に白熱電球の生産が縮小されることから、その代替電照資材が求められている。そこで、近年、耐用年数が長く、消費電力も小さい発光ダイオード(LED)を用いる方法が注目されている。しかし、キクでは、LED の光質と適正光量の関係による植物体への影響が明確になっておらず、技術はまだ確立されていない。そこで、市販されているLED 電球を用いて、輪ギクの生育や開花への影響を調査し、長日処理方法の確立を目指す。

[成果の内容・特徴]

  1. 使用する電照資材の放射エネルギーは、赤色LED 電球と赤色・遠赤色混合LED 電球は特定域波長のみで高い。白色LED 電球は、青と緑から黄色の波長で高く、その中で昼光色LED 電球と電球色LED 電球では、電球色の方が赤色光の波長が多く含まれている。一方、慣行の白熱電球は、長い波長にかけて放射エネルギーが増加し、遠赤色光が多く含まれている(図1)。
  2. 白色LED 電球の光合成有効光量子束密度(PPFD)は、白熱電球と比較して、光源から離れることによる減少割合が大きく、照射範囲が70%程度狭くなる(図2)。
  3. 夏秋ギク「岩の白扇」、「精の曲」、「スーパーイエロー」の3品種において、白色LED 電球は白熱電球と同等の開花抑制が認められる。切り花品質への影響も白熱電球と同等である(表1)。
  4. 秋ギク「神馬」において、赤色LED 電球、赤色・遠赤色混合LED 電球、昼光色LED 電球、電球色LED 電球は、いずれも白熱電球とほぼ同等の開花抑制が認められる。また、品質への影響は、赤色LED 電球で白熱電球よりも草丈が伸長するが、他の光源では白熱電球と同等である(表2)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 電球は、80cm 幅の畝の中央に1 列設置し、長日処理は、22 時から2時の4時間処理を行った結果である。
  2. 白色LED 電球は、東芝ライテック製の「LEL-AW6N/2」(6.9W、購入価格5,460 円)、「LDA9L」(9.4W、電球色、購入価格5,880 円)、「LDA9N」(9.4W、昼光色、購入価格5,880 円)を使用した。他社の白色LED 電球においては開花抑制の確認をしていない。また、赤色LED 電球は、鍋清製の「DPDL-R-9W」(購入価格4,500 円)、赤色・遠赤混合LED 電球は「DPDL-R-FR-6/3-9W」(購入価格9,000 円)を使用した。
  3. 白色LED 電球(6.9W)は白熱電球よりも照射範囲が狭いため、設置間隔を小さくする必要がある。
  4. LED 電球は、白熱電球よりも消費電力は1/10 程度で、耐用年数は40倍である。
  5. 光合成有効光量子束密度は、メイワフォーシス社のライトメーター「LI-250A」と光量子センサー「LI-190SA」で測定をした結果である。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
発光ダイオードを用いた電照技術の確立
予算区分
配当(発光ダイオード実用化事業)
研究期間
2009〜2011 年度
研究担当者
山形敦子、佐藤孝夫、間藤正美