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レーザーブルドーザー、レーザーバックホウにより水田表土の放射性物質を効率よく除去できる

[要約]

東日本大震災に伴う原発事故により放射性物質が降下、沈着した水田の表土をレーザー装置付きのブルドーザー、バックホウを用いて剥ぎ取れば、効率的に放射性物質濃度を減少できる。

[キーワード]

放射性物質、レーザーブルドーザー、レーザーバックホウ、フォールアウト

[担当]

福島県農業総合センター企画経営部経営・農作業科

[代表連絡先]

電話024-958-1700

[区分]

東北農業・基盤技術(作業技術)

[分類]

普及成果情報

[背景・ねらい]

東京電力福島第一原発の事故(2011.3.11)以降、放射性物質が降下、沈着(フォールアウト)して営農の支障となっており、精度よく迅速に除去する必要がある。

未耕起の水田を、レーザーシステム装置付きブルドーザー(以下レーザーブル)および法面バケット仕様バックホウ(レーザーバックホウ)を用いて、放射性物質が含まれる水田の表土を効率よく所要の厚さで除去する技術を開発する。

[成果の内容・特徴]

  1. レーザーブル、レーザーバックホウによる表土剥ぎの作業能率(ほ区1〜3 工区:9.2a)は高く、大面積の処理に有効である(0.74〜1.01 h/10a)。(表1
    レーザーブル(ブロック試験)の作業能率は1.0 h/10a、時速2.0km/h であり、放射性物質濃度は厚さ6cm の剥ぎ取りで77.0%減少する。(表1図1
  2. レーザーバックホウの作業能率(ブロック試験)は2.3 h/10a 程度であり、放射性物質濃度は厚さ6cm の剥ぎ取りでは85.9%減少する。(表1図1
  3. 表土剥ぎ取りの精度はレーザーブル、レーザーバックホウとも誤差は1cm 程度の精度であり、設計厚さ6cm とすることで雑草根(3〜5cm)のマットと放射性物質の大部分が含まれる5cm 以上を剥ぎ取れる(表2)。
  4. レーザーブル、レーザーバックホウを併用したほ区試験(92m×10m=9.2a:2 分割)の作業能率は、端部への片押しに比べ中央に集積する方法により約27%向上する(2 工区1.01→3 工区0.74h/10a:表1)。

[普及のための参考情報]

  1. 普及対象
    フォールアウトにより表土剥ぎ取りが必要となった未耕起田
  2. 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等
    東北・関東において、フォールアウトにより除染が必要となった地域
  3. その他
    1. 表土を剥ぎ取る場合は、土をこね返さないようにする。レーザーブルで表土剥ぎののち、ブレードで均平に仕上げる際に、クローラで数回踏みつけるとクローラに付着した放射性物質の濃い土と下の土が混ざって残るため、できる限り整地はしない。
    2. 試験ほ場(同地区内)の近傍の未耕起水田において、表土の5cm に放射性物質の約96%を含むと推定されている(福島県の水田土壌における放射性セシウムの深度別濃度と移流速度:東京大学大学院生命科学研究科・東京大学生物生産工学センター・福島県農業総合センター(2011):RADIOISOTOPES,60,323-328)。
    3. 表土除去による放射性物質の減少率は、放射性物質の鉛直分布の範囲や土質、ほ場条件、施工機械の機種等によって変動するため、施工前に現地で予備試験を行う。
    4. 作業順序は、調査計画→除草→測量→仮設道路設置→表土剥ぎ→積込みとする。

[具体的データ]

[その他]

研究課題名
土壌表面に残留する放射性物質の除去・低減技術の開発 ア 表土剥離による除去技術の開発 (1)ほ場の表土の土木機械による除去技術の確立
予算区分
科学技術戦略推進費(福島県の放射性高レベル負荷地帯における各種農作物による放射性セシウムのリスク低減技術の開発)
研究期間
2011 年度
研究担当者
中西誠二郎、池田健一
発表論文等
農業農村工学会東北支部(2011.11.26)研究成果「レーザーブルを用いた水田の放射性物質の除去技術」