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根粒の着生量に左右されずに安定した収量を得られる小畝立て深層施肥播種技術
[要約]
小畝立て深層施肥播種の大豆は、播種1ヶ月後頃から慣行より窒素の吸収が多くなり生育量が大きくなる。また子実肥大期においても窒素吸収量が多く、その結果、稔実莢数が増加して慣行よりも20%程度収量が向上する。
[キーワード]
大豆、小畝立て、深層施肥、収量
[担当]
山形県農業総合研究センター・土地利用型作物部
[代表連絡先]
電話023-647-3500
[区分]
東北農業・畑作物(畑作物栽培)
[分類]
普及成果情報
[背景・ねらい]
大豆栽培では湿害や地力低下などにより収量や品質の低迷が続いており、その打開策が求められている。湿害軽減対策としては小畝立て播種技術が開発され、また根粒菌の活動を阻害せず効率的に窒素供給をする技術として種子直下20 cmの土中に緩効性肥料を施用する深層施肥技術が報告されている。そこで両技術を組み合わせた新たな播種技術を開発して、低迷している大豆の収量を向上させる。
[成果の内容・特徴]
- 小畝立て深層施肥播種は高さ8〜10 cmの畝形成と、畝の頂上から15 cm程度の深さ(深層)への施肥、土壌表層への基肥散布と播種を同時に行う播種方法であり、専用の播種機(小畝立て深層施肥播種機)を使って播種をする(表1)。小畝立て深層施肥播種機は、小畝成形板を取り付けた代かきハローに、深層施肥用の施肥装置と肥料を土中に入れる施肥導管、さらに施肥播種ユニットを組み合わせた機械であり、播種速度は時速3〜4 km/hで圃場作業量は38〜46 a/hである。(表1)。
- 本技術では小畝立て深層施肥播種機を使って高度化成肥料を表層に0.2〜0.3 kg N/a施用して、深層に尿素または石灰窒素を0.5〜0.8 kg N/a施用する。
- 大豆の生育は播種1ヶ月後頃から窒素の吸収が多くなり、主茎長、分枝数が慣行よりも多くなる(図1、表2)。子実肥大期(8月下旬)には、根粒の着生量が多い条件でも少ない条件でも窒素吸収量が慣行よりも増加するため、稔実莢数が増えて慣行よりも20%程度収量が向上する(図1、表2)。
- 本技術の導入により10 aあたりの生産費は肥料代や農機具費などで3,301円増加するが、収量の増加による販売収入と交付金が増えるため、差し引き収益は10 aあたり16,000円程度増加する(表3)。
[普及のための参考情報]
- 普及対象:東北地域の大豆生産者
- 普及予定地域・普及台数:東北地域、2013年山形県に3台普及
- その他:
小畝立て深層施肥播種機は、代かきハロー、深層施肥ユニット、施肥播種ユニットが1セットとなった形式で2013年から市販されている。型式KDS-HHS 価格200万円(税別)
耕耘深さは、深層施肥の施用深さを確保するために15 cm以上とする。
慣行の大豆収量が35 kg/aを超える圃場では増収効果が得られない場合がある。
本成果は山形県内の水田転換畑において実証したものであり、深層施肥として尿素または石灰窒素を施用したデータを用いている。
[具体的データ]
(後藤 克典、長沢和弘)
[その他]
- 研究課題名
- 転換畑大豆の収量と品質を向上させる新たな生産技術の開発
- 水田転換畑における大豆生産基盤を改善する営農技術開発
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 2010〜2013年度
- 研究担当者
- 後藤克典、長沢和弘、伐明俊治(クボタアグリサービス(株))