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成熟期の高温条件と着果量がオウトウ「佐藤錦」の果実品質に及ぼす影響

[要約]

オウトウ「佐藤錦」は、着色始期以降の昼温が25℃以上の高温になると葉の光合成速度は低下し、果実着色及び肥大が劣る。また、着色は昼温、肥大・糖度は着果量の影響が大きい。高い夜温は、着色の進みと糖度上昇を抑制する傾向があるが、着果量を制限するとその影響は小さくなる。

[キーワード]

オウトウ、佐藤錦、高温条件、着果量、果実品質

[担当]

山形県農業総合研究センター・園芸試験場・果樹部

[代表連絡先]

TEL 0237-84-4125

[区分]

東北農業・果樹

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

オウトウ「佐藤錦」の着色始期以降の昼温・夜温の高低と着果量の多少が「佐藤錦」の光合成速度や果実品質に及ぼす影響を明らかにし、高温対策の資とする。

[成果の内容・特徴]

  1. 「佐藤錦」は、着色始期以降の昼温が25、30、35℃の条件では温度が高いほど、葉の光合成速度が低下し、呼吸量は増加する(図1)。
  2. 「佐藤錦」は昼温が高くなるほど、果実の着色が劣り、果実肥大も抑制される傾向がある。また、30℃以上ではウルミ果が増加する(表1)。
  3. 着色は着果量が多い場合も抑制されるが、より昼温の影響を受ける。一方果実肥大と糖度は、昼温よりも着果量の影響を強く受け、着果量が多いほど肥大・糖度ともに低下する(表2)。
  4. 「佐藤錦」における着色始期以降の高い夜温 (20℃)は、着色の進みと糖度上昇を抑制する傾向があるが、着果量を制限すると、果実品質への影響は小さくなる(表3、一部データ省略)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 試験方法
    1. 昼温試験(2011年)は「佐藤錦」/アオバザクラ台8年生樹(25Lポット栽培)での成績である。供試樹(各区3樹)は2011年6月7日(満開34日後)にハウスに搬入し、日中は設定温度(高温区:35℃、中温区:30℃、対照区:25℃)で換気を行い、夜間は開放して外気温で管理した。試験期間の実際の平均昼温(8:00〜15:55)は高温区:35.3℃、中温区:31.9℃、対照区:29.6℃であった。
    2. 夜温試験(2012年)は「佐藤錦」/アオバザクラ台7年生樹(60Lポット栽培)での成績である。供試樹(各区2〜3樹)は2012年5月31日(満開31日後)にハウスに搬入し、日中はハウスのサイドを開放し25℃設定で天窓の開閉を行った。夜間はハウスと内カーテンを閉じ、22〜3時に各区設定温度(高温区:20℃、中温区:15℃)でヒートポンプを稼働した。試験期間の実際の平均夜温(20:00〜23:55)は高温区:19.1℃、中温区:16.6℃であった。
  2. 光合成速度は着色始期の2011年6月11日〜15日に3年枝上の花束状短果枝葉(最大)を1樹につき1葉測定した。測定条件は、光量子:0、55、101、405 μmol/平方メートル/s、チャンバー内温度:高温区35℃、中温区30℃、対照区25℃、CO2濃度:外気と同様(約360ppm)とした。

[具体的データ]

(山形県農業総合研究センター園芸試験場)

[その他]

研究課題名
気象変動に負けないおうとうの高品質安定生産技術の開発
予算区分
県単
研究期間
2011〜2012年度
研究担当者
今部恵里・原田芳郎
発表論文等
今部ら(2013)東北農業試験研究 第66号:103-104