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昆虫病原性線虫剤によるリンゴのヒメボクトウ防除技術

[要約]

リンゴの枝幹害虫であるヒメボクトウに対しては、昆虫病原性線虫剤(スタイナーネマカーポカプサエ剤)を春と秋の年2回、蓄圧式散布器を用いて樹幹注入することにより、高い防除効果が得られる。

[キーワード]

リンゴ、ヒメボクトウ、昆虫病原性線虫剤、樹幹注入、防除

[担当]

福島県農業総合センター果樹研究所

[代表連絡先]

電話024-542-4191

[区分]

東北農業・果樹

[分類]

普及成果情報

[背景・ねらい]

福島県では2009 年にヒメボクトウによるリンゴとニホンナシの被害が確認され、被害発生地域が年々拡大している。ヒメボクトウの幼虫は、複数年に渡り集団で枝幹内部を加害するため、被害樹に大きなダメージを与える害虫であるが、効果的な防除法が確立されていない。このため、リンゴのヒメボクトウに対して登録のある(2013 年12 月現在)昆虫病原性線虫剤(スタイナーネマカーポカプサエ剤)の効果的な処理方法を検討し、防除法を確立する。

[成果の内容・特徴]

  1. 昆虫病原性線虫剤(スタイナーネマカーポカプサエ剤)を春と秋の年2回、樹幹注入することにより、ヒメボクトウ幼虫に対して高い防除効果が得られる(表1)。
  2. 蓄圧式散布器による本剤の樹幹注入は、注射筒による注入と比較して防除効果が高い(図1)。
  3. 以上の結果から、リンゴのヒメボクトウに対しては、本剤を春と秋の年2回、蓄圧式散布器を用いて樹幹注入することにより、高い防除効果が得られる。

[普及のための参考情報]

  1. 普及対象 リンゴ生産者
  2. 普及予定地域・普及予定面積 ヒメボクトウ被害発生地域・福島県の場合150ha
  3. その他
    1. 処理時期は本剤の有効成分であるスタイナーネマカーポカプサエの活動温度帯(15〜 30 ℃)とヒメボクトウ幼虫の生態を考慮し、5月中〜下旬(蛹化期前)と9月中旬〜 10 月上旬(越冬前)を目安とする。
    2. 蓄圧式散布器は薬液を直射できるタイプを使用する。
    3. 被害部のフラス(虫糞と木屑が混じったもの)および粗皮を除去してから処理する。
    4. 被害部の状況により効果のばらつきが大きいため、処理後のフラス排出状況をよく観察する。
    5. ニホンナシのヒメボクトウ防除にも適用できる技術である。

[具体的データ]

(星博綱)

[その他]

研究課題名
りんご枝幹害虫(ヒメボクトウ)に対する防除効果確認試験
予算区分
委託(全国農業協同組合連合会)
研究期間
2011 〜 2012 年度
研究担当者
星博綱、佐々木正剛、瀧田克典
発表論文等
星ら(2012)東北農業研究65,115-116