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福島県オリジナルリンゴ品種「リンゴ福島5号」の育成

[要約]

「ふじ」に「紅玉」を交配し選抜・育成した「リンゴ福島5号」は、10月上旬〜中旬に収穫される中生品種で、糖度が14〜16%程度と高く、独特の芳香を有する。果皮は濃赤色で着色良好である。また「ふじ」と交配親和性がある。

[キーワード]

リンゴ、交雑育種、中生品種、交配和合性

[担当]

福島県農業総合センター果樹研究所

[代表連絡先]

024-542-4191

[区分]

東北農業・果樹

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

福島県のリンゴ生産のおよそ7割を「ふじ」が占めている。そのような状況の本県において、中生リンゴの有利販売を確保し、「ふじ」に偏重した本県のリンゴの品種構成を改善する必要がある。そこで、「ふじ」と交配親和性があり、着色良好で食味に優れた中生種を育成する。

[成果の内容・特徴]

  1. 1986年に「ふじ」を種子親、「紅玉」を花粉親として交配した。
  2. 満開日は「ふじ」とほぼ同時期である。「ふじ」、「つがる」、「陽光」と交配親和性があり、これらの品種の受粉樹として利用できる。収穫時期は10月上〜中旬と、「ほおずり」や「陽光」とほぼ同時期である。収穫盛期は原木が満開後日数160〜170日程度、JM7台が満開後日数160日程度とJM7台で1週間程度早まる傾向である(表1)。
  3. 外観は果皮色が濃赤〜暗赤(カラーチャート0409〜0410)で着色良好である。収穫が遅れた果実ではワックス(油上がり)の発生が見られる。果形は円〜円筒。果形がやや歪であるが、JM7台は原木に比べて歪さや玉揃いが改善される傾向である。果実重は原木が250g程度、JM7台が300〜400g程度とJM7台でやや大玉である(表1図1)。
  4. 果実品質は、糖度が14〜16°Brix程度で、JM7台が原木と比較してやや劣る傾向である。リンゴ酸は原木が0.30〜0.35g/100ml程度、JM7台が0.20〜0.30g/100ml程度とJM7台で低くなる(表1)。肉質は中〜やや良、果汁は中〜多。甘味で食べやすい食味で、独特の芳香を有する。
  5. リンゴ生産者、県職員、JA職員をパネラーとした官能検査では、3年間共通して、「陽光」と比較して外観、着色、香りはプラスの評価である(図3)。
  6. 枝梢が細く側枝が枝垂れる傾向が認められ、隔年結果が見られる。

[成果の活用面・留意点]

  1. 本県のリンゴ生産で問題とされる着色不良をカバーでき、「ふじ」の受粉樹として利用可能な中生種として期待できる。
  2. 隔年結果が見られるため、適正着果量に留意する。側枝が枝垂れる傾向があるため幼木〜若木期に主枝・亜主枝候補枝に切り返しを適宜加えて下垂しすぎないよう注意する。
  3. 県内の主要リンゴ産地全域に適応可能で、特に果汁が多く、食味に優れた果実が収穫できる南会津、会津地域において推奨される。
  4. 現在登録出願中である。また、苗木の配布は県内限定である。

[具体的データ]

(滝田雄基)

[その他]

研究課題名
リンゴの交雑・選抜による育種
予算区分
県単
研究期間
1990〜2012年度
研究担当者
山家弘士、國沢高明、宗形隆、佐藤守、沢田吉男、佐久間宣昭、岡田初彦、松野英行、瀧田誠一郎、小野勇治、大橋義孝、木幡栄子、山口奈々子、斎藤祐一、赤井広子