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キュウリ黒星病防除薬剤の効果と本病感受性の品種間差異
[要約]
ジフェノコナゾール水和剤、イミノクタジンアルベシル酸塩・ピリベンカルブ水和剤、マンゼブ水和剤、TPN水和剤はキュウリ黒星病防除に高い効果が期待できる。また、主要な露地夏秋キュウリ品種の中に、本病抵抗性の強いものはない。
[キーワード]
感受性、キュウリ、黒星病、チオファネートメチル耐性菌、薬剤防除
[担当]
岩手県農業研究センター・環境部・病理昆虫研究室
[代表連絡先]
電話0197-68-4424
[区分]
東北農業・生産環境(病害虫)
[分類]
普及成果情報
[背景・ねらい]
キュウリ黒星病は、夏季冷涼な東北地方の露地夏秋キュウリにおいて特に問題となる病害である。本病に農薬登録(病害適用)のある薬剤は少なく、さらに近年、本病に効果が高いとされてきた薬剤が登録失効や作物登録削除となり、また、チオファネートメチル剤耐性菌の発生が確認された。有効薬剤に関する知見も乏しいことから、現場指導者から、キュウリに農薬登録を有する薬剤の本病への防除効果について再評価が求められていた。そこで、本病に対する数種殺菌剤の防除効果を明らかにするとともに、現在流通している主要な露地夏秋キュウリ向け品種の本病感受性について検討し、防除指導上の参考とする。
[成果の内容・特徴]
- ジフェノコナゾール水和剤(商品名:スコア顆粒水和剤)、イミノクタジンアルベシル酸塩・ピリベンカルブ水和剤(ファンベル顆粒水和剤)、マンゼブ水和剤(ジマンダイセン水和剤)、TPN水和剤(ダコニール1000)は、キュウリ黒星病防除に高い効果が期待できる(表1)。
- 本病抵抗性の強い品種は、主要な露地夏秋キュウリにない(図1)。
[普及のための参考情報]
- 普及対象:東北地方の露地夏秋キュウリ生産農家、公立研究機関及び農業改良普及センター、病害虫防除所、JA関連組織
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:東北地方の夏秋キュウリ栽培地域2,134ha(2012年度野菜生産出荷統計)
- その他:
- 表1は、供試薬剤を連続3回散布した試験結果である。ジフェノコナゾール水和剤(本剤の使用回数:3回以内)、イミノクタジンアルベシル酸塩・ピリベンカルブ水和剤(3回以内)、マンゼブ水和剤(3回以内)、TPN水和剤(8回以内)は、2014年1月現在、キュウリ黒星病に農薬登録(病害適用)を有し、本病防除に利用できる。成果の内容については2年間の試験で同様の結果であった。チオファネートメチル剤耐性黒星病菌の発生が認められる場合は、表1を参考に他剤により防除する。
- 発病確認後の散布では防除効果が劣るので、本病防除は予防散布を基本とする。また、耐性菌発生リスクが高いジフェノコナゾール水和剤、ピリベンカルブ・イミノクタジンアルベシル酸塩水和剤は連用しない。
- 本病多発地域では、図1を参考に本病感受性が特に高いと推定される品種の作付けを避ける。
- 現在主流のブルームレス台木栽培では、うどんこ病や褐斑病に罹病しやすくなることが知られている。一方で黒星病については、ブルーム台木の「黒ダネ南瓜」、ブルームレス台木「パワーZ2」のいずれに接ぎ木した場合でも、穂木における本病発生への影響はほとんどない(データ省略)。
[具体的データ]


(岩舘康哉)
[その他]
- 研究課題名
- キュウリ黒星病の防除技術確立/新農薬実用化試験
- 予算区分
- 県単/受託(日本植物防疫協会)
- 研究期間
- 2010〜2012年度
- 研究担当者
- 岩舘康哉(岩手農研セ)
- 発表論文等
- 1) 岩舘(2013) 北日本病虫研報、64: 72-75
- 2) 岩舘(2011) EBC研究会誌、7: 7-17
- 3) 岩舘、吉田(2011) 北日本病虫研報、62: 59-64