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アカスジカスミカメ性フェロモン製剤と試作製剤によるデータの変換方法

[要約]

アカスジカスミカメ性フェロモンの試作製剤による誘殺数は雄誘殺数×1.27+0.23、または総誘殺数×1.31+0.21とすることで市販製剤による誘殺数に簡易的に変換可能である。

[キーワード]

発生予察、斑点米カメムシ、モニタリング、水田、牧草地

[担当]

環境保全型防除・侵入病害虫リスク評価

[代表連絡先]

電話029-838-8885

[研究所名]

東北農業研究センター・生産環境研究領域

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

斑点米カメムシの主要種であるアカスジカスミカメでは、雌が雄を誘引する性フェロモンの主要3成分Hexyl butyrate,(E)-2-Hexenyl butyrate,(E)-4-Oxo-2-hexenalを用いてフェロモン製剤が開発されている。フェロモン製剤の開発段階においては上記3成分をポリエチレンチューブに5:1:1で保持させた試作製剤が各地の試験研究機関に提供されてデータ蓄積がなされている。その後、同チューブを用い上記3成分の比率を5:1:10に変更して誘殺効率を向上させた製剤(以下、市販製剤)が2013年から市販されている。試作製剤で蓄積されたデータを有効活用するため、試作製剤と市販製剤で得られたデータを比較検討し、データの簡易変換方法を開発する。

[成果の内容・特徴]

  1. 水田と牧草地における誘殺消長は市販製剤が試作製剤をおおむね上回り(図1)、この傾向はアカスジカスミカメの世代と関係なく安定的である。
  2. 市販製剤による雄誘殺数と総誘殺数は水田、牧草地ともに有意差が認められない(図2)。従ってトラップに偶然捕獲される雌数は無視できるほど少なく、調査時に雄雌の判別を省略できる。
  3. 市販製剤(y)と試作製剤(x)の誘殺数の関係は雄誘殺数でy = 1.27 x + 0.23(R2 = 0.38, p < 0.001)(図3)、総誘殺数でy = 1.31 x + 0.21(R2 = 0.47, p < 0.001)で表され、これによってデータを簡易的に変換できる。

[成果の活用面・留意点]

  1. 本成果により試作製剤で得られたデータを活用できる。
  2. 性フェロモントラップを用いた調査の際、雄雌の判別にかかる労力の軽減が見込まれる。

[具体的データ]

(田渕 研・安田哲也)

[その他]

中課題名
侵入病害虫等の被害リスク評価技術の開発及び診断・発生予察技術の高度化
中課題番号
152e
予算区分
交付金
研究期間
2012-2013 年度
研究担当者
田渕研、安田哲也、榊原充隆、望月文昭(信越化学)
発表論文等
田渕ら(2013)北日本病虫研報64: 130-135.