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グライ低地土水田における可給態リン酸量に応じたリン酸減肥技術
[要約]
沖積土水田では、可給態リン酸が6mg/100g以上であれば、最高分げつ期頃の稲体リン酸含有率は茎数確保に必要な0.7%を上回る。グライ低地土水田において、可給態リン酸が10mg/100g程度の圃場でリン酸50%減肥、20mg/100g程度の圃場で無リン酸栽培しても、生育および収量は慣行栽培と同等である。
[キーワード]
水稲、リン酸減肥、可給態リン酸、グライ低地土
[担当]
青森県産業技術センター農林総合研究所・生産環境部
[代表連絡先]
電話0172-52-4391
[区分]
東北農業・生産環境(土壌肥料)
[分類]
研究成果情報
[背景・ねらい]
水田土壌の可給態リン酸量は増加傾向にあり、長年の土壌改良資材や施肥により土壌に十分量のリン酸が蓄積している圃場が増えている。リン酸資源の枯渇が懸念され、肥料価格が高止まりしている状況では、効率的なリン酸肥料の利用のために、水田土壌のリン酸肥沃度に応じたリン酸施肥技術が必要である。そこで、土壌の可給態リン酸量が水稲の初期生育に及ぼす影響を明らかにするとともに、リン酸が蓄積したグライ低地土水田圃場においてリン酸減肥栽培を検討した。
[成果の内容・特徴]
- 最高分げつ期頃の稲体のリン酸含有率が0.7%より低くなると、リン酸不足により茎数が減少する。リン酸含有率が0.7%以上の場合には、リン酸以外の要因の影響が大きくなり、リン酸含有率と茎数の関係は明確でない。沖積水田土壌では栽培前の可給態リン酸が6mg/100g以上であれば、無リン酸条件でも最高分げつ期頃の稲体リン酸含有率は0.7%を上回る(図1、図2)。
- 活着期が低温の場合には、最高分げつ期頃の稲体リン酸含有率が0.8%より低くなると、茎数が減少する。栽培前の可給態リン酸が6mg/100g以上であれば、無リン酸条件でも最高分げつ期頃の稲体リン酸含有率は0.8%を上回る(図1、図2)。
- 可給態リン酸が11mg/100gのグライ低地土水田圃場で無リン酸栽培しても、収量および玄米タンパク質含有率は慣行施肥した場合と同等であるが、移植1か月後の茎数が少なくなる場合がある。50%減肥栽培では、慣行施肥した場合と同等の生育、収量および玄米タンパク質含有率となる(表1)。
- 可給態リン酸が18mg/100gのグライ低地土水田圃場では、無リン酸栽培しても生育、収量および玄米タンパク質含有率は慣行施肥した場合と同等である(表1)。
[成果の活用面・留意点]
- 水稲品種「つがるロマン」作付け水田に適用する。
- 図1、図2の試験データは、水田圃場に埋設した枠(縦30cm×横30cm×深さ20cm:底に遮根シートを張った木枠)に可給態リン酸の異なる土壌を厚さ15cmになるように詰め、つがるロマン(中苗)を栽植株数22.2株/平方メートルで移植して行った枠試験で得られたものである。
- 可給態リン酸は、風乾細土をトルオーグ法により分析した値である。
- リン酸減肥を行うと可給態リン酸が減少する場合があるため、3年に1回程度の割合で土壌診断を行い、施肥設計を再検討する。
[具体的データ]



(青森県農林総合研究所)
[その他]
- 研究課題名
- 環境負荷軽減のための土壌管理技術の開発
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 2011〜2013年度
- 研究担当者
- 谷川法聖・米村由美子・藤澤春樹・境谷栄二