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宮城県の水稲作における5年間のカリ50%減肥が土壌交換性カリに及ぼす影響
[要約]
土壌交換性カリが22 〜 32mgK2O/100g 乾土の黒泥土および灰色低地土では、水稲作において、稲わらをすき込んだ場合、5年間カリを標準施用量の50%に減肥しても、収量は標準施用時と同等であり、栽培跡地土壌の交換性カリも標準施用時に比べ減少しない。
[キーワード]
水稲、カリ、減肥、土壌群、土壌交換性カリ
[担当]
古川農業試験場・土壌肥料部
[代表連絡先]
電話0229-26-5107
[区分]
東北農業・生産環境(土壌肥料)
[分類]
研究成果情報
[背景・ねらい]
近年化学肥料の原料が高騰しており、カリ肥料の価格が高止まりしているが、一方で、米価は下落している。そこで、生産コスト低減を目的として、稲作においてカリの減肥が注目されている。しかしながら、複数年のカリ減肥は土壌交換性カリの低下につながる可能性がある。そこで、水稲作において5年間のカリ減肥が土壌交換性カリに及ぼす影響について明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 水稲5作後の土壌交換性カリの増減値(mg/100g 乾土/5年)は、無施用区が-4 〜-12、50%減肥区が+6 〜-15、標準対照区が+1 〜+6 である(表1)。
- 土壌交換性カリが22 〜 32mg/100g 乾土の黒泥土および灰色低地土では、5年間カリを標準施用量の50%に減肥しても、交換性カリは標準施用時に比べ減少しない(図1)。
- カリ50%減肥により、交換性カリ20mg/100g 乾土の黒ボク土は、標準対照区よりも5mg/100g 乾土、90mg/100g 乾土の褐色低地土では21mg/100g 乾土減少する。よって、このような土壌では減肥により交換性カリが低下する可能性がある(図1)。
- カリ無施肥で5年間水稲を連作すると全土壌で土壌交換性カリは標準対照区よりも5〜 18mg/100g 乾土減少することから、宮城県の水稲無カリ栽培の基準である40mg/100g乾土以下ではカリを無施肥としない(図1)。
- 50%減肥のカリ施用量(20kg/10a/5年)は水稲連作5年間の収穫物(穂)に含まれるカリ10 〜 17kg/10a/5年よりも多い。また、還元された稲わらに含まれるカリは55 〜106kg/10a/5年である(表2)。
- 5年間カリを標準施用量の50%減肥(20kg/10a/5年)した稲わらすき込み田における幼穂形成期の水稲茎葉カリ濃度は、一穂籾数が低下するとされる2.4%(木内ら1962 年)よりも高く維持され、かつ、水稲茎葉中のK/(K+Na)が0.95 以上と高い水準であることから(赤井ら2012 年)、カリ欠乏による減収はない(表3)。
[成果の活用面・留意点]
- 本成果のデータは古川農業試験場内土壌型別コンクリート枠ほ場(1区画9×9 m)で行った試験から得たものである。なお、無施用区、減肥区、標準対照区は1区画を3分割して設定した。
- 本試験の前作は大豆(2006 年〜 2008 年)を慣行栽培し、この期間、牛ふん堆肥を2 t/10a/年散布した。
- 試験ほ場用水の水溶性カリ濃度は2.4ppm(2010 年〜 2013 年の平均値)であり、1作期の用水を2000t/10a とすると、4.8kg/10a のカリが用水によりほ場へ流入したと試算される。
- 肥料は硫安、くみあい粒状34 重過石、粒状くみあい塩化加里を施用した。
- 標準施用量の50%減肥試験は交換性カリが20mg/100g 乾土以上の土壌で行ったものである。
- カリを減肥する場合、少なくとも3年〜5年に一度は土壌診断を行いカリ肥よく度を確認し、施肥設計に反映させる必要がある。
[具体的データ]




(宮城県古川農業試験場)
[その他]
- 研究課題名
- 水稲単作におけるPK 減肥基準策定
- 予算区分
- 受託(JA 全農みやぎ)
- 研究期間
- 2009 〜 2013 年度
- 研究担当者
- 阿部倫則、本田修三