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宮城県における津波被災後除塩復旧水田の作土窒素無機化量の特徴
[要約]
2013年復旧田では堆積砂や客土の影響により、2012年復旧田と比べ作土の窒素無機化量が少ない水田が多い。また2012年復旧田の窒素無機化量は1年目には高かったが、水稲作付け後の2年目には水稲連作田並みの値まで低下している。
[キーワード]
除塩水田、窒素無機化量、窒素肥沃度、堆積土砂、客土
[担当]
古川農業試験場・土壌肥料部
[代表連絡先]
電話0229-26-5100
[区分]
東北農業・生産環境(土壌肥料)
[分類]
研究成果情報
[背景・ねらい]
2011年3月11日の東日本大震災により、太平洋沿岸地帯の水田は津波によって甚大な被害を受け、早急な農業復興対策の提示・実施が必要となっている。宮城県では農地復旧除塩事業等により復旧対象水田面積13,000haのうち、2013年5月末では7,500haまで除塩工事が終了し水稲作付けが行われた。除塩復旧工事が被災程度の軽い内陸部から地盤沈下や作土流出を伴う沿岸部へ進み、新たな課題として窒素肥沃度の低下、水稲収量の低下がみられるようになった。その原因を探るために実態を明らかにし、今後の参考資料にする。
[成果の内容・特徴]
- 亘理山元地区での除塩復旧工事は、内陸部から被災程度の重い沿岸部へ進められている。そこでの復旧後1年目作土の窒素無機化量は、2012年復旧田では多いが、2013年復旧田では少なく、堆積砂の影響により窒素無機化量が低下している(図1)。
- 2013年復旧田には、地盤沈下や作土流出に伴う復旧工事で山砂を客土し、窒素肥沃度やCECが低い水田がある。このような水田では水稲収量の低下や、軽石、軟岩等の混入による耕起・移植作業への支障がみられる事例がある(表1)。
- 本県で除塩復旧工事が終了した水田作土の未風乾土の窒素無機化量は、2012年復旧田では4mg/100g乾土以下の頻度が少なく地力が高い傾向にあり、2013年復旧田では4mg/100g乾土以下の頻度が多く地力が低い傾向であった(図2)。2012年復旧田では主に堆積泥や濁った海水の混入が地力を高めたと推察され、2013年復旧田では堆積砂や客土により、地力低下を招く傾向となっている。
- 2012年に除塩復旧後1年目の作土の窒素無機化量は県平均よりも高い水田が多かったが、水稲を一作作付けした2年目の窒素無機化量は、一部の水田を除き1年目より低下しており、被災していない水稲連作田並みまで低下している(図3)。
[成果の活用面・留意点]
- 土壌窒素無機化量は、除塩工事終了後の任意地点から水田作土を採取し、培養測定したデータである。
- 客土水田では、窒素肥沃度が低下するので生育に応じた肥培管理をする必要がある。
[具体的データ]




(宮城県古川農業試験場)
[その他]
- 研究課題名
- 津波被災水田の実態調査と除塩法・栽培管理技術の確立
- 予算区分
- 国庫(復興交付金)
- 研究期間
- 2011〜2013年度
- 研究担当者
- 鈴木剛、本田修三