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土壌溶液中カリウムイオン濃度に基づく玄米中放射性セシウム濃度の推定

[要約]

田植直前の土壌溶液中カリウムイオン濃度が7mg/L以上あれば、玄米中放射性セシウム濃度が基準値以下となる。これにより、早期に玄米中放射性セシウム濃度の基準値超過リスクを診断できる。

[キーワード]

土壌溶液、カリウムイオン、放射性セシウム、玄米

[担当]

福島県農業総合センター・生産環境部

[代表連絡先]

電話024-958-1718

[区分]

東北農業・生産環境(土壌肥料)

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

土壌中交換性カリ含量の増加に伴い、玄米中放射性セシウムの吸収を抑制できることはすでに報告されている。しかし、交換性カリは土壌採取後分析値が得られるまで時間を要することから、簡易・迅速な測定による分析値から玄米中放射性セシウム濃度を推定する技術開発が求められている。そこで、田植直前の5cm深土壌溶液中カリウムイオン濃度から玄米中放射性セシウム濃度を推定できる、交換性カリに代わる簡易・迅速な指標値を提案する。

[成果の内容・特徴]

  1. 土壌溶液の採取方法は、以下に示すとおり。
    1. DAIKI社製ミズトール(DIK-8392集液導管カップ20cm、吸引用シリンジのセット)と試験管立て(ステンレスワイヤー製SS18-25)を準備する(図1)。
    2. ミズトールを試験管立てに固定する(ミズトールの脇から田面水が入らないように)。このときミズトールが動かないようにしっかりと固定する。
    3. 試験管立てに固定したミズトールを水田に沈める。このとき素焼きの中心部分が深さ5cmになるようにミズトールに印をつけておく。
    4. 設置後、5分程度時間を置き、吸引用シリンジで土壌溶液を50mL程度採取する。
  2. 土壌中交換性カリ含量と土壌溶液中カリウムイオン濃度には高い相関がある(図2)。
  3. 田植直前の土壌溶液中カリウムイオン濃度が7mg/L以上あれば、玄米中放射性セシウム濃度が基準値以下となる(図3)。
  4. コンパクトカリウムイオンメーター(LAQUAwin, B-731, HORIBA)による土壌溶液中カリウムイオン濃度は原子吸光光度計による分析値とほぼ同等の値を示し、高い相関がみられた(図4)。この結果、コンパクトカリウムイオンメーターを用いた田植直前の土壌溶液中カリウムイオン濃度から玄米中放射性セシウム濃度の基準値超過リスクを診断できる。

[成果の活用面・留意点]

  1. 2011年産の玄米から高濃度の放射性セシウムが検出されたほ場である。
  2. 土壌溶液はミズトール(DIK-8392, DAIKI)により5cm深の試料を採取した。

[具体的データ]

(福島県)

[その他]

研究課題名
高濃度汚染地域における農地土壌汚染技術体系の構築・実証(水稲移行低減プロ、セシウム動態プロ)
予算区分
国庫
研究期間
2013 年度
研究担当者
齋藤 隆、高橋和平(福島農総セ)、太田 健(東北農研)、牧野知之(農環研)