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前植生の十分な撹拌とカリ追肥は牧草中放射性セシウム濃度を低下させる
[要約]
撹拌が不十分で前植生塊が存在する圃場では、2、3番草で放射性セシウム濃度が上昇し、カリ追肥量を増やしても牧草への放射性セシウム吸収抑制効果が上がらない。撹拌が十分な圃場では、カリ追肥標準量(5kg/10a)で吸収抑制できる。
[キーワード]
放射性セシウム、牧草地、カリ追肥、前植生、撹拌、草地更新
[担当]
岩手県農業研究センター畜産研究所 家畜飼養・飼料研究室
[代表連絡先]
電話019-688-7317
[区分]
東北農業・畜産飼料作
[分類]
研究成果情報
[背景・ねらい]
牧草地の除染において、前植生を土壌によく混和し、土壌中交換性カリ含量を高めることで牧草への放射性セシウム(RCs)吸収が抑制されることが明らかとなっているが、前植生の撹拌が不十分な圃場も散見されている。
そこで、除染目的で草地更新を実施した牧草地において、土壌中の前植生状態とカリ追肥量が牧草へのRCs吸収へ与える影響を明らかにする。
[成果の内容・特徴]
- 前植生の撹拌が不十分な圃場では、土壌中に高濃度RCsを含む前植生が塊状に分布し、撹拌十分な圃場と比べて土壌中のRCs濃度は均一とはならない(表1、2)。
- 前植生塊が土壌中に存在する圃場では、2番草、3番草において牧草中RCs濃度が上昇する。カリ追肥による吸収抑制効果は、撹拌が十分な圃場と比較して小さく、追肥量を増やしても上がらない(図1)。
- 前植生を十分に撹拌した圃場では、カリを標準量(5kg/10a)追肥することで、2番草以降の牧草中RCsの上昇を抑制することができる(図1)。
[成果の活用面・留意点]
- 除染目的の草地更新実施時及び草地更新実施した牧草地への追肥の際に活用することができる。
- 本試験は、火山灰由来の黒ボク土での試験結果であり、他の土壌では別途検討を要する。
- 前植生の撹拌状況は、更新方法や前植生ルートマットの厚さ、枯殺の有無などに影響されるので、更新時の状況が把握できない場合には、土壌断面調査等で確認が必要である。
- 撹拌が不十分な圃場では、土壌中交換性カリ含量が低下すると牧草中RCs濃度が大きく上昇することが懸念されるため、カリ施肥を確実に実施すること。
[具体的データ]
(佐藤まり子)
[その他]
- 研究課題名
- 放射性セシウム汚染牧草地における除染効果の検証および放射性セシウムレベルの追跡調査
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 2013年度
- 研究担当者
- 佐藤まり子、藤原哲雄、尾張利行、山形広輔