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ダイレクト移植可能な超急速ガラス化ウシ胚のストロー内直接融解方法の開発
[要約]
超急速ガラス化保存したウシ胚は、棒状に凍結した希釈液を胚移植用ストローに挿入することで、直接融解及びダイレクト移植が可能である。本手法は、移植後の受胎率も良好で、正常産子も誕生しており、性判別胚や低品質胚などの有効利用が図れる。
[キーワード]
ウシ胚、超急速ガラス化保存、ダイレクト移植、性判別胚、低品質胚
[担当]
秋田県畜産試験場・飼料・家畜研究部
[代表連絡先]
電話0187-72-3871
[区分]
東北農業・畜産飼料作
[分類]
研究成果情報
[背景・ねらい]
ウシにおいて、性判別などの遺伝子診断を行ったバイオプシー胚や、胚生産時に得られる低品質胚は耐凍性が低く、十分に活用されていない。そのため、従来の凍結方法より融解後の生存性が高い超急速ガラス化保存法の研究が行われている。しかし、冷却速度を上げるために保存時に器具を使う場合が多いことなどから、ダイレクト移植が困難であり、利用が限定されている。そこで、優良遺伝資源の効率的な利用を図ることを目的に、ウシ生産現場で簡便に利用できるように、胚移植用のストロー内で直接融解し、ダイレクト移植可能な方法を開発する。
[成果の内容・特徴]
- ウシ胚を、Solid Surface Vitrification法で超急速ガラス化保存し、希釈液を棒状に凍結することにより、胚移植用のストロー内で融解・希釈できるストロー構成が可能である(図1)。
- 本手法による融解後の胚生存性は、48時間後でも88.9%以上と高く、低耐凍性を示す胚に対しても有効と考えられる(表1)。
- ストロー内融解後にダイレクト移植した受胎率は、バイオプシー胚で50.0% (11/22)、低品質胚では47.4% (9/19)と、良好な成績である(表2)。
- 本手法により黒毛和種の正常産子が誕生し、バイオプシー胚由来の2頭が、秋田県有種雄牛として後代検定を実施中である(図2)。
[成果の活用面・留意点]
- ウシ胚移植現場で活用することで、遺伝子診断胚や低品質胚など、優良遺伝資源の効率的な利用が可能となる。
- 本手法は専用の凍結機器を必要としないため、胚生産施設で低コスト化が図れ、移植現場においても、簡易に融解操作が行えるため、普及性が高いと考えられる。
- 本手法を行う場合、ウシ胚の処理技術および顕微鏡などが必要である。
- 希釈液やストロー内構成などについては、更に検討が必要である。
[具体的データ]
(高橋利清)
[その他]
- 研究課題名
- ウシ低ランク胚および体外操作胚の有効活用による高品質肉用牛生産技術の検討
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 2009〜2011年度
- 研究担当者
- 高橋利清、西宮弘、伊藤
- 発表論文等
- 1) 高橋利清「ガラス化保存した哺乳動物胚の直接融解可能な移植用ストロー内保存方法及び封入方法」特願2013-14304
- 2) 高橋ら(2011)東北畜産学会報、60(3):92-98