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飼料作物生産における堆肥からの放射性物質移行低減技術

[要約]

放射性セシウム(以下Cs)濃度が1,077〜1,938Bq/kgの堆肥を5t/10a施用したほ場で栽培した飼料用トウモロコシ等のCsは未検出であり、堆肥投入量を増やしたスーダングラスのポット栽培では、ゼオライト、プルシアンブルー添加区のCs濃度が無添加区に比べ低下した。

[キーワード]

放射性物質、移行低減、家畜ふん尿、飼料作物

[担当]

宮城県畜産試験場・草地飼料部

[代表連絡先]

電話0229-72-3101

[区分]

東北農業・畜産飼料作

[分類]

研究成果情報

[背景・ねらい]

東京電力福島第一原子力発電所事故により、基準を超える放射性セシウム(以下Cs)が土壌や飼料等から検出され、生産活動の大きな支障となっている。飼料の利用自粛や検査により、畜産物の安全性は確保されているが、粗飼料→ふん尿→堆肥→土壌という流れで営まれてきた循環型生産に大きな支障を来しており、安全な再生産技術の確立が求められている。このため、汚染された堆肥(暫定許容値400Bq/kg)から飼料作物への放射性物質の移行低減を図る技術について検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. 2011年産の放射性物質に汚染された牧草(オーチャードグラス)と乳牛ふんを混合調製した堆肥のCs濃度は、堆肥化の進展とともに高くなる。(図1)
  2. 堆肥調製時にゼオライト(以下ZL)を添加したCs濃度が1,077〜1,693Bq/kgの堆肥を5t/10a施用したほ場に栽培した飼料用トウモロコシのCs濃度は、無添加の対照区、試験区ともに未検出(検出限界値以下)である。(表1)
  3. 堆肥調製時にプルシアンブルー(以下PB)を添加したCs濃度が1,907〜1,938Bq/kg堆肥を5t/10a施用したほ場に栽培したスーダングラスのCs濃度は、無添加の対照区,試験区ともに未検出(検出限界値以下)である。(表1)
  4. ZL堆肥を用いたポット栽培試験(汚染堆肥を施肥した土壌のCs濃度は207〜259Bq/kg:図2)では、スーダングラスのCs濃度はZLの添加及び添加量の増加により、低下する傾向にある。(表2)
  5. PB堆肥を用いたポット栽培試験(汚染堆肥を施肥した土壌のCs濃度は236〜334Bq/kg:図2)では、スーダングラスのCs濃度は、対照区では検出されたが試験区では未検出(検出限界値以下)である。(表2)
  6. ZLの添加及び添加量の増加により、ポット試験における移行係数が低下する。(表2)

[成果の活用面・留意点]

  1. 汚染堆肥の製造時にZLやPB等の混合により、飼料作物への移行低減効果は期待できるが、 添加割合の検討が必要である。
  2. 移行低減効果に対する持続性の検討が必要である。
  3. 草種別の移行低減に関する検討が必要である。

[具体的データ]

(宮城県畜産試験場)

[その他]

研究課題名
自給飼料生産における放射性物質の移行低減技術の検討
予算区分
県単
研究期間
2012〜2014年度
研究担当者
石川知浩、伊藤裕之、中鉢正信