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ALS阻害剤交差抵抗性イヌホタルイの確認と対策成分含有除草剤の使用法
[要約]
従来のSU抵抗性雑草に有効な新規ALS阻害剤に対して抵抗性を示す遺伝子変異型を有したイヌホタルイが宮城県の複数地点に存在する。イヌホタルイ対策成分としてブロモブチドを含む一発処理型除草剤は、「ノビエ2葉期」以前の処理で効果が安定する。
[キーワード]
アセト乳酸合成酵素(ALS)阻害剤、イヌホタルイ、除草剤抵抗性、ブロモブチド
[担当]
宮城県古川農業試験場・水田利用部
[代表連絡先]
電話0229-26-5106
[区分]
東北農業・稲(稲栽培)
[分類]
研究成果情報
[背景・ねらい]
スルホニルウレア(SU)系除草剤抵抗性イヌホタルイに対しても効果が高く、「ノビエ3葉期・ホタルイ3葉期まで」の適用登録をもつ新規のアセト乳酸合成酵素(ALS)阻害剤を混合した一発処理型除草剤が近年急速に普及している。しかし、SU以外のALS阻害剤にも抵抗性を示す(以下、ALS阻害剤交差抵抗性)イヌホタルイが存在することが既に報告されており(内野2007)、新規ALS阻害剤の普及に伴いこれらが顕在化することが懸念される。また、既に抵抗性イヌホタルイへの対策成分としてブロモブチドを含んだ除草剤の使用が普及しているにも関わらず、現地では依然イヌホタルイの多発が問題となっている。そこで、宮城県内におけるALS阻害剤交差抵抗性イヌホタルイの発生状況を明らかにすると共に、ブロモブチド含有除草剤の有効な使用方法を改めて検証する。
[成果の内容・特徴]
- 遺伝子解析の結果、宮城県内の水稲作付け圃場においてイヌホタルイの残草がみられた圃場のうち、2012年は38筆中2筆、2013年は29筆中4筆(うち2筆は2012年と同一圃場)でALS阻害剤交差抵抗性を示す遺伝子変異型を有する個体の発生が認められる。(表1)
- ALS阻害剤交差抵抗性を示す遺伝子変異個体が確認された圃場は、発根法や実生法、酵素活性法などの各種生物検定において交差抵抗性を示す個体の割合が高く、生物検定を利用することによりALS阻害剤交差抵抗性イヌホタルイが存在する可能性の高い圃場を検出できる。(表1、図1)
- 抵抗性イヌホタルイ対策成分としてブロモブチドを含む一発処理型除草剤は、イヌホタルイ2葉期以前での処理が可能な「ノビエ2葉期」までに使用することで、イヌホタルイに対する安定した除草効果が得られる。(図2)
[成果の活用面・留意点]
- 発根法は2012年には3株/処理区、2013年には5〜10株/処理区をDPX処理区、ALS処理区にそれぞれ供試し、実生法は10粒/処理区、4反復を2012年のみ、酵素活性法は5株/処理区を2013年のみ供試した結果である。
- 「ノビエ2.5葉期」や「ノビエ3葉期」まで処理できる従来のブロモブチド含有一発処理型除草剤は「ホタルイに対しては2葉期まで」の適用である。
- イヌホタルイに対して効果が高く、ALS阻害剤と作用機作の異なる成分には、ブロモブチドの他にクロメクロップやベンゾビシクロン、シメトリン、MCPBなどがある。ALS阻害剤交差抵抗性イヌホタルイの防除には上記の有効成分を含む混合剤の使用や体系処理による防除を検討する。
[具体的データ]



(宮城県古川農業試験場)
[その他]
- 研究課題名
- 「大規模水田農業地帯における総合的雑草管理システムの構築」
- 「水稲関係除草剤適用性試験」
- 予算区分
- 県単、(公財)日本植物調節剤研究協会受託
- 研究期間
- 2005〜2013年度
- 研究担当者
- 北川誉紘、大川茂範(宮城県古川農業試験場)