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現地事例の疫学的調査による水田難防除雑草の残草要因の探索と定量評価
[要約]
水田難防除雑草の残草事例を収集し、その特徴を草種毎に比較することで、圃場管理や農業基盤等、草種毎に特徴的な残草要因の存在を明らかにすることができる。モデル地域の残草状況を経年追跡調査することで、前作・前々作の残草が当年作に及ぼす影響を定量評価できる。
[キーワード]
水田難防除雑草、水田輪作、田畑共通雑草、残草要因、現地事例調査
[担当]
宮城県古川農業試験場・水田利用部
[代表連絡先]
電話0229-26-5106
[区分]
東北農業・稲(稲栽培)・畑作物(畑作物栽培)
[分類]
研究成果情報
[背景・ねらい]
各種水田雑草の残草には、個別圃場の除草剤使用法、地域毎に異なる農業基盤、そして圃場整備や水田輪作等の土地利用の変化が大きく影響していると考えられる。各雑草種についてより関連性の高い要因が明らかになれば有効な防除対策が得られ、その影響を定量的に評価することができれば、具体的な管理目標を策定することが可能となる(浅井2011)。そこで、宮城県全域より収集した残草事例について圃場毎の管理の特徴や圃場が位置する農業集落の農業基盤の特徴等を比較することで各草種の残草に特異的に影響を及ぼしうる要因を特定可能か検討する(後ろ向きコホート研究)。また、水田輪作に取り組む地域をモデルとして、残草状況を圃場毎に経年追跡調査していくことで、前作、前々作における残草が当年水稲作の残草にどの程度影響を及ぼしうるのか定量的な評価を試みる(前向きコホート研究)。
[成果の内容・特徴]
- 県内各地から収集した残草圃場の事例について、残草草種別に圃場の管理・整備状況を調査することで、水田輪作に取り組む圃場では取り組まない圃場に比べてイヌビエの多発リスクが3.9倍高く、作業委託している圃場では作業委託していない圃場よりもクサネムの多発リスクが2.1倍高いことが明らかとなる(表1)。また、イヌホタルイ残草圃場では除草剤の使用回数が少なく散布時期が遅いこと、そしてタイヌビエの残草圃場では逆に除草剤の散布時期が早いことが残草に影響していることが明らかとなる。
- 残草圃場を含む農業集落について、農業センサス資料を基に草種別に特徴を比較すると、イヌビエ、イヌホタルイが多発する集落は農業従事者率が高く、ミズアオイ、オモダカ等の多発する集落では貸付耕地率が高いといった傾向が明らかとなる(表2)。
- 異なる作付け前歴の圃場を含む転作地域をモデルとして、圃場毎の残草状況を調査することで、大豆作後の復元田2年目ではノビエ、ホタルイが、復元初年目にはアメリセンダングサ、タウコギ等の田畑共通雑草の残草が助長されることが示唆される(図1)。
- さらに各圃場の前年・前々年の残草状況の継続調査の経過を加えることで、田畑共通雑草の残草は、水稲連作では前作の影響が大きく、復元2年では大豆作の影響は極小さいことが示され、復元1年目では前水稲作残草の0.46倍に前年大豆作残草の0.41倍が加算されるといった様に、経年の影響を定量的に評価することが可能となる(図2)。
[成果の活用面・留意点]
- 残草要因の特定により、除草剤散布時期等の改善策の提案や、既存の地理統計情報を基に残草リスクの高い農業集落を推定するリスクマップの作成が可能となる。
- 残草状況の経年変化を数値化とすることで、当年の残草が次年・次次年の残草に及ぼす影響を試算する事ができ、当年除草作業の効果を定量的に提示することができる。
[具体的データ]




(宮城県古川農業試験場)
[その他]
- 研究課題名
- 「環境保全型水稲栽培の推進に向けたIWMの実践支援」
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 2009-2011年度
- 研究担当者
- 大川茂範・三上綾子・安藤慎一朗(宮城県古川農業試験場)
- 平 智文(宮城県食産業振興課)、浅井元朗(中央農研)