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水田輪作におけるイネWCS専用品種「リーフスター」を用いた漏生イネ対策
[要約]
寒冷地において、イネWCS専用品種「リーフスター」は既存の飼料用イネに比べて籾の登熟が進みにくいため、収穫時のこぼれ籾由来による翌年の漏生イネの発生が少なく、後作の食用水稲を作付けした場合の籾混入リスクを低く抑えることができる。
[キーワード]
飼料用イネ、水田輪作、漏生イネ、リーフスター
[担当]
宮城県古川農業試験場・水田利用部
[代表連絡先]
電話0229-26-5106
[区分]
東北農業・稲(稲栽培)
[分類]
普及成果情報
[背景・ねらい]
水田輪作地帯では、飼料用イネ専用品種を栽培した場合、収穫時に落下するこぼれ籾由来の漏生イネが翌年の食用水稲において発生し、食用米に飼料用イネの玄米が混入する恐れがある。このことから、宮城県では飼料用イネ専用品種の導入が進んでいない。そこで、本試験では、飼料としての十分な収量と品質を確保しつつ、後作の食用米に漏生イネ由来の玄米が混入するリスクを低減する技術として、寒冷地において籾の登熟が進みにくいイネWCS 専用品種「リーフスター」の利用を検討する。
[成果の内容・特徴]
- イネWCS に専用品種「リーフスター」を用いることにより、後作の食用水稲「まなむすめ」移植栽培の収穫適期における漏生イネの平方メートル当たり総籾数を「ホシアオバ」の1/3〜 1/4 程度に抑えられる(表1)。
- 漏生イネの玄米の粒厚別割合は、「リーフスター」は「ホシアオバ」に比べて“しいな”が多く、1.9mm 以上の玄米も少ないため(図1)、食用品種に混入した場合の混入率は「ホシアオバ」より低く、1%以下である(表2)。
- 「リーフスター」のWCS 栽培では、穂重および稔実籾割合は出穂後日数が経過するにつれて増加する(図2)。WCS 収穫適期はサイレージ品質の面から、稲体水分65 〜 70%とされており、これは出穂後14 〜 20 日で到達する(図2)。そのため、適期に収穫することで、稔実籾の割合が低く、こぼれ籾由来の漏生イネの発生リスクをより抑えられる。
[普及のための参考情報]
- 普及対象は水田輪作地帯でイネWCS を栽培している生産者である。
- 普及予定地域は「リーフスター」の登熟が進みにくい寒冷地である。
- 宮城県におけるイネWCS の栽培面積はおよそ1600ha であり、専用品種の普及面積は100ha 未満である(2013 年調べ)。
- 「リーフスター」は宮城県では平成23 年に奨励品種として採用しており、本県では極晩生である。出穂期は「ホシアオバ」が食用品種「まなむすめ」より8日程度遅く、「リーフスター」は「ホシアオバ」より18 日〜 30 日程度遅い(宮城県普及に移す技術第83 号、第86 号)。
- イネWCS 後作の食用水稲栽培は、コンタミ回避のため移植栽培が基本であり、漏生イネ発生を抑えるために丁寧な代かきや,プレチラクロールなどの成分を含む初期除草剤の施用といった対策をとることが望ましい(飼料用米マニュアル)。
[具体的データ]




(宮城県古川農業試験場)
[その他]
- 研究課題名
- 寒冷地水田における飼料用稲−麦二毛作体系の開発と実証
- 予算区分
- 委託プロ(国産飼料プロ)
- 研究期間
- 2011 − 2012 年度
- 研究担当者
- 内海翔太、安藤慎一焉A星信幸、大川茂範(宮城県古川農業試験場)、辻本淳一(元宮城県古川農業試験場)