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原料柿の放射性セシウム濃度とあんぽ柿加工による濃度の変化
[要約]
原料柿の放射性セシウム濃度は、経年により減衰し、樹冠下部の果実でやや高い傾向である。また、あんぽ柿に加工するとその濃度は約 3.6 倍になり、幼果で 10Bq/kg 以下の果実は、加工しても非破壊検査機のスクリーニングレベルである 50Bq/kg 以下になる割合が高い。
[キーワード]
あんぽ柿、原料柿、原発事故、放射性セシウム、濃度変化
[担当]
福島県農業総合センター・果樹研究所
[代表連絡先]
電話 024-542-4191
[区分]
東北農業・果樹
[分類]
過年度研究成果情報(平成26年度)
[背景・ねらい]
東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴う放射能の影響により、福島県のブランド品である伊達地方のあんぽ柿は加工を自粛している。現在、産地では安全な地域をモデル地区に設定し、放射性物質の全量検査により平成 25 年度から出荷を再開したが、出荷量は未だ少ない。安全なあんぽ柿の生産拡大を進めるためには、原料柿をはじめあんぽ柿に加工した際の放射性物質の濃度の変化について明らかにする必要がある。
[成果の内容・特徴]
- 原料柿の放射性セシウム濃度の異なる 13 園地を選定し、各園地 3 〜 5 樹から 2013 年は収穫期(11 月 7 日)に、2014 年は幼果期(7 月 18 日)と収穫期(11 月 6 日)に果実を採取し、原料柿とあんぽ柿の放射性セシウム濃度を調査した。
- 原料柿の放射性セシウム濃度は、園地間差はあるものの明確に減衰を示し、2014年の収穫期には 2013 年の約 7 割に減少した(図1、図2)。
- 原料柿の放射性セシウム濃度は、園地による差はあるものの、樹冠上〜中部に比較して、下部で高い傾向が認められる(図3)。原料柿検査のサンプリングにおいては、安全性を考慮し、樹冠下部からの採取が妥当と考えられる。
- 原料柿をあんぽ柿(水分率 35%換算)に加工すると、放射性セシウム濃度は約 3.6 倍となる(図4)。
- 幼果期の果実中放射性セシウム濃度の基準である 10Bq/kg 以下の果実は、あんぽ柿に加工しても非破壊検査機のスクリーニングレベルである 50 Bq/kg 以下になる割合が高い(図5)。
[成果の活用面・留意点]
- 安全なあんぽ柿生産のための原料柿検査の基礎データとして活用できる。
- あんぽ柿の放射性セシウム濃度は、原料柿を採取する園地や樹体、製品の乾燥状態によって影響を受けることから、安全なあんぽ柿を生産するためには、原料柿を採取するほ場条件に応じた出荷管理が必要である。
[具体的データ]





(志村浩雄)
[その他]
- 研究課題名
- 樹園地に残留する放射性物質に関する試験
- 予算区分
- 県単
- 研究期間
- 2014 年度
- 研究担当者
- 志村浩雄、岡田初彦、阿部和博、湯田美奈子
- 発表論文等
- 園芸学会東北支部平成 27 年度大会研究発表要旨