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アスパラガス伏せ込み促成栽培における高温処理による11月生産技術
[要約]
アスパラガス伏せ込み促成栽培において、10 月中旬に根株を掘り取り、伏せ込み後加温せず10〜14 日間静置する。その後、電熱線の温度設定を30℃として28℃以上4日間の高温処理を行うことにより休眠が打破され、11 月から若茎生産が可能である。
[キーワード]
アスパラガス、伏せ込み促成栽培、早期出荷、安定生産、休眠
[担当]
岩手県農業研究センター・技術部
[代表連絡先]
電話0197-68-4420
[区分]
東北農業・野菜花き(野菜)
[分類]
普及成果情報
[背景・ねらい]
東北各県では、冬季の高収益品目としてアスパラガス伏せ込み促成栽培が行われているが、アスパラガスは秋季の低温遭遇により休眠が覚醒した後に伏せ込みを行わないと収量が減少する。そのため、国内の一部地域を除き、11 月上旬からの生産は困難である。
近年、アスパラガスの休眠が高温によっても打破することが明らかとなったことから(Yamaguchi・Maeda,2015)、高温により休眠を打破し、簡易に11 月生産が可能となる技術を確立することを目的とする。
[成果の内容・特徴]
- 慣行法で株養成を行い、10 月中旬に根株を掘り取り・伏せ込みを行い、10〜14 日間加温を行わずに静置して吸収根の発生を促す。
- 伏せ込み床に、シルバーポリや農ポリ等の被覆資材を被覆し、電熱線の温度コントローラーの設定を30℃とする。これにより地下茎付近の地温28℃以上を確保し、4 日間の高温処理を行うことによって休眠打破を図る(図1)。
- 高温処理が終了した後、伏せ込み床の被覆資材を除去し、温度コントローラーの設定を16℃として、高温処理を終了する。
- 以降、慣行法と同様の温度管理・水管理を行うことにより、11 月から若茎生産が可能となる(表1)(図2)(図3)。
[普及のための参考情報]
- 普及対象:アスパラガス伏せ込み促成栽培生産者
- 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:東北全域50ha
- 現時点で適用可能な品種は「ウィンデル」および「ウェルカム」である。
- 高温処理により早期に若茎の萌芽が開始されることから、伏せ込み後の加温しない期間に新たな吸収根の発生を促すことが極めて重要である。そのため、伏せ込み後に好天が続く場合は、ハウスを開放する等により伏せ込み床の地温を上げないよう努める。また、若茎が急激に伸長することによる吸水量不足が懸念されることから、過度に長い期間、高温処理は行わない。
- 高温処理は電熱線で行う。処理に5 日間要した場合の電気料金は1,725 円以下である( 株養成面積10a の場合。電熱線2kW×5 日×農事用電力B・172.44 円/kW日( 東北電力) ) 。
[具体的データ]




(山口貴之)
[その他]
- 研究課題名
- 岩手型アスパラガス伏せ込み促成栽培安定生産技術の確立
- 予算区分
- 実用技術、県単
- 研究期間
- 2009〜2011 年度(実用技術)、2012〜2014 年度(県単)
- 研究担当者
- 山口貴之
- 発表論文等
- Yamaguchi, T. and T. Maeda(2015). Environ. Control. Biol. 53(1) :23-26