- [要約]
- 京都府の中山間地域において集落が存続するための最低定住条件すなわち限界条件は、1)集落の総戸数規模が8.5戸以上、2)小学校までの距離3km以内、3)最寄りのDID(人口集中地区)までの到達時間が30分以内であることを解明した。
中国農業試験場・総合研究部・農村システム研究室
[連絡先]0849-23-4100
[部会名]営農
[専 門]農村計画
[対 象]
[分 類]行政
- [背景・ねらい]
- 限界集落とは、存続が危ぶまれるまでに生産や社会の活動水準が低下したところを指し、中山間地域に広範に存在する。これらの集落は消滅・再生の岐路にある。そこで、ここでは限界集落を維持するために必要な最低定住条件すなわち限界条件を解明する。
[成果の内容・特徴]
- 限界条件は、特定農山村法(1993年9月施行)に指定された京都府の全集落を対象にした統計解析によって解明した。
- 1990年に統計上「消滅」した集落の平均総戸数は8.5戸であった。
- 1960年から90年の間存続した集落を対象にして、その総戸数の増減によって、各集落を「発展」、「中間」、「衰退」の3類型に分類した(図1)。
- 定住条件とみなし得る説明変数として集落カードから30変数を抽出し、判別分析を適用して、上記3類型を予測判別する上で有効な変数を探った(表1)。その結果、「総戸数(90年)」、「総戸数(60年)」、「小学校までの距離(80年)」の3変数が有効であった(正判別率72.6%)。戸数規模と共に小学校距離が有効なのは、交通弱者(transportaion poor)、ここでは毎日通学する児童の徒歩限界が定住を左右するからである。
- DIDに関する変数はBからは抽出されなかったが、それは各DIDの規模格差による。つまり、最寄りDIDが大規模の衰退集落の平均到達時間は約90分であるのに対し、極小規模DIDは30分を切る(図2)。また、DIDまでの平均到達時間は縮小傾向にある。
- 1)〜4)の結果より、限界条件および行政上の対策として、(1)8.5戸以上の総戸数規模の維持(対策:学区単位の集落連合)、(2)小学校までの距離3km以内(対策:小型で複合利用の過疎バス、フリーバス、デマンドバスの運行)、(3)最寄りDIDまでの距離30分圏内(対策:小都市育成および周辺集落との交通を考慮した地域政策)が必要である。
[成果の活用面・留意点]
- 行政機関が中山間地域の限界集落を確定し、施策を講ずる際の指標として活用できる。集落戸数規模は府県によって異なるので、府県毎に算出する必要がある。
[その他]
研究課題名:限界町村における定住人口の役割と地域社会の活性化方策の解明
予算区分 :別枠(中山間活性化)
研究期間 :平成8年度(平成6〜8年)
研究担当者:室岡順一、立川雅司(技会)、大江靖雄
発表論文等:限界町村におけるルーラルミニマムの解明、日本農村生活研究会西日本支部
第18回大会(一般報告)、1995.
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