- [要約]
- チャの幼木期は、心抜きによる仕立ての方が一律の高さでせん枝するより根量が多くなり、根系の深層化に有効である。心抜きは定植2、3、4年目の越冬後に行うのが良く、樹形形成にも悪影響がない。
滋賀県茶業指導所
[連絡先] 0748-62-0276
[部会名] 茶業
[専 門] 栽培
[対 象] 工芸作物類
[分 類] 指導
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[背景・ねらい]
- 茶樹の根系は定植後数年の幼木期に決定されると考えられ、幼木期の地下部生育は成園後の生育に大きな影響を与える。また、根系の浅い茶園では気象災害を受けやすいばかりでなく、経済樹齢が短縮することも問題になっている。
一方、幼木の仕立ては樹形形成の上で重要な作業であるが、仕立て時のせん枝が地下部の生育を抑制するため、根系の深層化にも悪影響を及ぼす。
そこで、幼木期の地下部生育に影響が少く、根系の深層化に有効な仕立て方法、時期について検討を行った。
[成果の内容・特徴]
- 仕立ての方法は慣行の一律せん枝(一律の高さで水平にせん枝する)及び心抜き(主幹を低く切り下げ側枝を通常のせん枝位置より10cm程度高くせん除する)、仕立ての時期は越冬後の3月及び一番茶芽硬化期の6月とした。なお、定植5年目にはいずれの区も地上40cmの高さで一律せん枝した(図1、表1)。
- 定植5年目の総根量は、一律の高さでせん枝するより心抜きをする方が優れる。また、15cm及び30cm以深の根量も心抜きをする方が多く、根系が深層化する(図2)。
- 3月及び6月に年2回心抜きを行うより、年1回、3月あるいは6月に行う方が30cm以深の根量が多くなる(図2)。また、6月より3月に行う方が深層部の木化根量が多く、根系の深層化により有効である(図表省略)。
- 定植5年目に全区一律せん枝した後の樹高、株張りは、3月あるいは6月に心抜きをすることで、一律せん枝と同等かやや優れる。また、分枝数及び分枝径も同様で、樹形形成に対して悪影響はみられない(表2)。
[成果の活用面・留意点]
- 根系の深層化により、気象災害への耐性向上、経済樹齢の延長が期待できる。
- 本成果は‘やぶきた’を用いたものであり直立型品種に適用できるが、開張型品種への適用については未検討である。
- 心抜きはせん枝機の利用ができないため、一律せん枝より労力を必要とする。
[その他]
研究課題名 : 茶樹の幼木期におけるせん枝技術の確立
予算区分 : 県単
研究期間 : 平成9年度(平成5〜9年)
研究担当者 : 忠谷浩司
発表論文等 : なし
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