ブドウ「巨峰」の水気耕栽培法


[要約]
水気耕栽培は、ブドウの施設栽培における根圏管理を容易に行うことができる。土壌改良、施肥及びかん水等の管理を省力化できるとともに、土壌病害も回避できる省力栽培技術である。
島根県農業試験場・園芸部・果樹科
[連絡先]   0853-22-6650
[部会名]   果樹 
[専 門]    果樹
[対 象]    果樹類
[分 類]    研究

[背景・ねらい]
 島根ブドウの主要作型である加温栽培において、養水分を効率的に供給するための適正な根圏維持管理技術は十分確立されているとは言えない。また、生産者の高齢化に伴って、土壌改良など重労働を伴う栽培管理が困難となりつつあることや、土壌病害の多発などが問題となっている。これらに対処するために、地下部管理をより精密に制御でき、土壌管理の必要がない省力化技術として水気耕栽培を確立する。

[成果の内容・特徴]

  1. 水気耕栽培は、ブドウの根部をプラスチック網で支えて浮かし、その上からシャワー方式によって培養液を施用する循環式水気耕栽培装置によって行う(図1)。
  2. 新梢及び新根の生育が旺盛になる培養液の濃度は、EC 0.5mS/cmである(図2)。
  3. 最適N濃度は、20ppm(NO3−N:NH4−N=2:1)である(表1)。その他の培養液濃度組成は、PO;20ppm、KO;30ppm、CaO;40ppm、MgO;30ppm、MnO;0.5ppm、FeO;1ppm、ZnO;0.5ppm、BO;0.5ppmが適当である。
  4. 冬季(12月上旬〜5月上旬)、夏季(5月中旬〜10月上旬)ともに、根圏温度が30〜33℃で新梢及び新根の生育が最も優れる(図3)。
  5. 水気耕栽培における水分消費量(単位葉面積当たり)は、開花期までが1.0〜1.6リットル/uと多く、それ以降、成熟期までは0.9〜1.0リットル/uでほぼ同じである。なお、曇雨天日における水分消費量は、各時期とも晴天日の30〜50%程度である(図省略)。
  6. 水気耕栽培に適する台木品種は、生育及び果実品質両面から判断して「101−14」が最適である(図省略)。

[成果の活用面・留意点]

  1. 循環式水気耕栽培では根が酸素不足にならないように、できるだけ空気に触れさせるようにする。
  2. 根圏温度は、コスト面を考慮して冬季は30℃、夏季は33℃を超えないように管理する。特に夏季は、外気温の影響を受けて高温になりやすいので注意する。
  3. 水分供給量は、生育ステージ別の単位葉面積当たり水分消費量を基に、各生育ステージの葉面積を測定して算出する。

[その他]
研究課題名 : 人工培地を用いた超省力根圏管理システム開発による施設果樹栽培技術の確立
予算区分   : 地域重要新技術開発促進事業
研究期間   : 平成5年〜9年度
研究担当者 : 安田雄治、小豆沢 斉
発表論文等 : ブドウ‘巨峰’の水気耕栽培における培養液濃度が生育に及ぼす影響、日本植物工場学会平成7年度大会学術講演要旨集、63-64、1995.
              ブドウ‘巨峰’の水気耕栽培における根圏温度が生育に及ぼす影響、日本植物工場学会平成8年度大会学術講演要旨集、1-2、1996.
              ブドウ‘巨峰’の水気耕栽培におけるN濃度が生育に及ぼす影響、園学中四国支部要旨、36号、9、1997.
              ブドウ‘巨峰’の水気耕栽培における水分消費量、園学雑、66別2、216-217、1997.
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