キャベツ夏まき秋冬どり栽培におけるセル成型苗の限界定植日


[要約]
キャベツのセル成型苗は地床苗より3〜4日早く定植すれば地床苗と同時に収穫できる。加西市周辺平地部での寒玉系晩生‘寒太鼓’の限界定植日の目安は9月8日で、年平均気温が1℃異なると7〜12日、品種間では4〜8日のずれが見込まれる。
兵庫県立中央農業技術センター 農業試験場・園芸部    
[連絡先]   0790-47-1117
[部会名]   総合研究、野菜・花き(野菜)  
[専 門]    栽培
[対 象]    葉茎菜類
[分 類]    普及

[背景・ねらい]
 夏まき秋冬どりキャベツ栽培において、地床苗からセル成型苗への転換が進んでいる。従来地床苗で栽培してきた地域では、セル成型苗の導入により収穫日が遅れたり、不完全球が増加する等の問題が発生している。このためセル成型苗と地床苗の生育の違いを把握し、セル成型苗栽培で良品生産のための限界定植日を地域・品種を含めて検討する。

[成果の内容・特徴]

  1. セル成型苗(128穴)と地床苗をともに30日育苗で同時に定植した場合、セル成型苗の収穫日は地床苗に比べて遅れる。収穫の遅れは定植時期により異なるが、約10〜30日となる(図1)。定植から収穫までの積算温度は、セル成型苗が地床苗よりも約100℃高く、この値は定植時期の3〜4日間の積算温度にほぼ相当する。このためセル成型苗は地床苗より3〜4日早く植えることにより、収穫時期が等しくなると推定される。
  2. 異なる地域でのキャベツ‘寒太鼓’の良品生産のための限界定植日を不完全結球が10%を超えるかあるいは、結球葉数が60枚以下になる時期から推定すると、年平均気温13.4℃の神崎町では8月29日、14.2℃の加西市や14.7℃の神戸市西区では9月8日が限界定植日となり、年平均気温1℃の差で7〜12日のずれがある(図23)。
  3. 同様の方法により、品種特性の違いによる限界定植日は寒玉系晩生‘寒太鼓’に比べ、寒玉系中晩生で低温伸長性に優れた‘彩ひかり’は約4日、寒玉〜春中間系中晩生で低温結球性の高い‘エムスリー’は約8日遅れてもよいと考えられる(図4)。

[成果の活用面・留意点]

  1. セル成型苗と地床苗の比較は定植日を基準にした数字であり、育苗日数を考慮すると播種日は必ずしも早める必要はないが、定植期と同様に早くするのが無難である。
  2. 地域別(裏日本気候)の限界定植日はさらに日照条件、土壌条件を加味する必要がある。

[その他]
研究課題名 : 野菜産地の維持形成のための機械化、軽作業化による安定生産技術体系の確立 − 重量野菜の機械化作業体系の確立 −
予算区分   : 国庫助成(地域基幹)
研究期間   : 平成9年度(平成6〜10年)
研究担当者 : 竹川昌宏、大西忠男
発表論文等 : キャベツ秋冬どり栽培におけるセル成型苗の生育・収量からみた定植限界日、兵庫県農業技術センター研究報告(農業編)、第46号、1998.
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